というわけで、課題や問題が山積みとなった30年ぶりの富士開催、F1日本GP。
事実上、初めて富士で開催されたと言ってもいいでしょうね。
F1を取り巻く環境も含めて、30年前とはあまりに違いすぎますから。
現地で感じた、“改善できるはず”な問題点を挙げてみると…
まず、場内から。
- トイレが少なすぎる。
- どこも長蛇の列。指定席はスタンドの周囲までフェンスで囲まれて、空きスペースが十分にあるにも関わらず、仮設トイレはその外。自由席組や通路の歩行者と一緒になり、大混乱。これだけでもおかしい。
- 喫煙所が少なすぎる。
- 喫煙所(灰皿)はトイレの前にしかなく、周囲に何重にもできた人垣がトイレ待ちの列と多重交錯し、大混乱に。灰皿まで到達できず、吸い殻をそこらに捨てていた人も多数(←携帯灰皿を携行しましょう)。並んでいる嫌煙家の人は、辛かったでしょうねぇ…。吸っている人間がどうこう言えた義理ではないですが…。
- 指定席の囲み内、誰も人がいない片隅でタバコに火を付けると、係員が飛んできて注意されました。指定席エリア内にも喫煙所を作れー。
- 指定席のアドバンテージが低すぎる。
- 展望に関しては、むしろ自由席のほうがいいんじゃないかと思える箇所も多数。仮設スタンドに長イスがあるだけで、最低でも自由席の3倍、3万円以上の料金となる。
- 鈴鹿のように、指定席と自由席では雲泥の差、自由席組は観客扱いされない(苦笑)ようなスタイルとは、まるで違う。
- 場内ビジョン(モニター)が少なく、設置場所も悪く、小さすぎる。
- 双眼鏡がなければ目視は不可能。双眼鏡を使っても、細かい部分は見えません。ましてや豪雨では…。
- 場内放送が聴き取りづらい。
- 音量は十分だが、周囲のスタンドなどに反響してしまい、ほとんど聴き取れない。FMラジオは必須。
- 歩行通路が狭い。
- もともとそれしか通路がない丘陵部(笑)はともかく、周回道路と歩行通路が共存する部分では、大部分が関係車両通行用に仮設フェンスで仕切られ、狭い部分に観客がごった返すことに。関係車両は通行する時間帯が限られるのだから、時間によって融通を利かせることもできるはず。
- 特にスピードウェイプラザへの出入り口はひどく、日曜は身動きができないほど。将棋倒しで圧死や負傷者の出なかったことが不思議。
- 雨天対策が皆無
- 観客が雨宿りするところは皆無。仮設スタンドの指定席にしても、スタンド下の通路部分で何とか…と思ったものの、天井部(?)は落下物防止用の布が貼られているだけ。霧雨程度しか防げず、野ざらしの自由席と環境は同じ。
- 3箇所ある各ビレッジにも屋根のある部分はなく、飲食物を買ってもびしょ濡れになりながら食べなければならない。日曜の豪雨では、焼きそばがうどんになります(苦笑)。
- 鈴鹿でも状況に大差はないですが、雨天確率が50%を越えるかもしれない富士ですからねぇ。
こうした“精神的な苦痛”に耐えた観客を待っていたのが、帰路の悲惨なシャトルバスですからねぇ…。
そりゃ、「富士では二度とやるな!」、「トヨタのクルマには二度と乗らない!」なんて不満も爆発しますよ。
“場内”という意味では、フラッグや横断幕の禁止はどうなんですかね。。?
実はこのことを知らず、現地ではフラッグ類のないことが不思議だったのですが…。
このことも一端でしょうが、粛々と、とにかく無事に終えることが最優先で、それ以外の余計なモノは排除するような雰囲気? それがサーキット内に満ちていたような気がしますね。や、観客側ではなく、運営側の強い意志が。F1ってある意味、お祭りだとも思うのですが、そうした感覚があまりに欠如している運営なんじゃないかと。
まぁ、スタンドでフラッグを縦横無尽に振り回されたら、後ろの客は迷惑なわけですが…。とにかく、何が何でもトラブルにつながるようなことは回避すべし。そうした姿勢の表れでしょうね。
でも、決勝レース終了後のビクトリーランは寂しかったですよねぇ…。ハミルトンも、「こんな殺風景なビクトリーランは初めてだ」と思ったことでしょう(苦笑)。観客席だけでなく、マーシャルがフラッグを振り回す姿もないんですから。あれ、「何かあったら困るからコース近くに出るな、フラッグも振るな」というお達しでも出ていたんですかね?
と、ここまでは、来年以降の開催で改善されることを期待しましょう。
個人的には、富士での開催を喜んでいるし、続けてもらいたいので。
次、“場外”について。
要するに入場&退場方法ですね。
原則として徒歩入場禁止にしたのは、正解でしょう。
これを許可したら、周辺の私有地山林にテントを張り、泊まり込むような輩が続出するはずですから。そこかしこにクルマを止めて車中泊する連中もいるでしょう。間違いなく、周辺住民から苦情が出ます。
そこで富士スピードウェイの立地を考えれば、全観客をシャトルバス輸送とするのは仕方ない、と言うより唯一の選択肢でしょう。
でも、そのシャトルバス運行が…大問題。
3〜5時間待ちとなったバス乗り場の惨状をいくつかピックアップしてみると…
- 大混乱でどうにもならない状況に、バス乗り場の一部の係員は暴動を恐れ、逃げ出したらしい。
- 列の最後尾を表すプラカードが、そこらに投げ捨てられた列もあったらしい。
- プラカードを観客自らが持ち、後ろの人に回していたらしい。
- バスは乗り場入口付近に待機させられたまま、中に入れなかったらしい。JTBの誘導担当者がアホすぎて、バスの運転手たちもキレていたとか。
- 一部観客がバスを適材適所に配置するよう進言&誘導したところ、運転手たちから感謝の言葉をかけられたそう。彼らはバス会社の社員、旅行業界の主・JTB関係者には口が裂けても文句など言えませんから。
- 土曜の段階で「これでは日曜はパニックになる」と、現場の派遣&バイト係員やバス運転手たちから様々な解決案が提示されたものの、JTBの担当者は受け付けず、当初のマニュアル通りにしか動かなかったらしい。
- バス乗り場の惨状について場内アナウンスするよう現場の係員が進言したものの、サーキット側が拒否したらしい。
ちなみに、バス待ちの数時間、トイレも水分補給も不可能です。
バス乗り場にそうした設備が皆無なんですから。
そのためには列を離れて遠くまで歩いていく必要があり(最低30分は列を離れることに)、単独で並んでいた場合はその度に数時間待ちとなってしまうわけで。
このバス輸送に関して、仕切ったのはJTB。
サッカーW杯やRally JAPANでもシャトルバス輸送を仕切り、観客を悲惨な目に遭わせた、あのJTBです。
もうね、それを知った時点で半ば予想はしていたんですよ。W杯の宮城、Rally JAPANとも、現地でその惨状を体験しているわけですから。ただ、それらと今回では、観客数と開催規模が全然違いますからねぇ。学習能力、ゼロ。
と言うか、学習する気もないですよね。「何時間待たせようが、運べたのだから問題ない」、「運べなかった(行きで決勝に間に合わなかった路線があった)分だけはミスを認める」でしょ、基本姿勢は。暴動が起きて負傷者が出たわけでもないし。
富士でF1が開催できなくなろうが何だろーが、知ったこっちゃないわけですよ。
観客輸送に関して富士スピードウェイやトヨタを非難する意見をあちこちで見かけますが、違います。JTBの責任ですから。
富士スピードウェイの公式サイトには、観客へのお詫びの文面がアップされています。
F1日本グランプリご来場のお客様へ
このたびの大会では、悪天候にもかかわらず、多くのお客様にご来場いただき、心より厚くお礼申し上げます。
しかしながら、お客様のご期待に沿えず、弊社の大会運営上の不手際により、
様々なご迷惑をおかけいたしましたことを、大会主催者として深くお詫び申し上げます。
特にシャトルバスご利用のお客様には、雨の降る寒い中、長時間にわたり乗降をお待たせするなど多大なご迷惑をおかけし、重ねてお詫び申し上げます。お客様からのご批判やご叱声を謙虚に受け止め、来年の大会がご満足いただけるものとなるよう、全社を挙げて改善努力してまいる所存です。
ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
また、トヨタの社長もプレス会見でお詫びをしたそうな。
で、肝心のJTBは…知らん顔。そんなもんです。
周辺の路線バスやタクシーに関して、事前に各運行会社に問い合わせた人も多いらしいです。
が、返答はどこも「どうなるのか、こちらもわからず苦慮しています」だったそう。
ふだんのレース開催時には富士スピードウェイ側から何らかの情報開示があるそうなのですが、今回のF1日本GPに関しては、問い合わせても「輸送は全てJTBが仕切っているので」。にも関わらず、肝心のJTBから情報開示は皆無だったとか。
サーキット周辺の宿泊施設にしても、大半をJTBが抑えられるだけ抑えてしまい、一般客が利用できた施設はごくわずか。F1以外の客を受け入れることもできず、地元では非難囂々だったとか。
ここまでくると、JTBが諸悪の根元だという気もしてきますねぇ。
でも。
悲惨なシャトルバス方式のおかげで周辺道路に渋滞は起こらず。
運びきれないため観客移動に数時間もの時間差が生じた結果、悪天候で行楽客が激少なかったこともあり、東名・中央高速とも渋滞はナシ。
大渋滞→多重衝突事故→死傷者多数なんて最悪のシナリオも発生せず、観客輸送は大成功! トヨタが社会的責任を問われるような事態も起こらなかったのです。
素晴らしい。全てJTBが頑張ってくれたおかげなわけで(苦笑)。
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