JR福知山線脱線事故 その4

[Traffic] Railway

 日々いろいろな報道がされていますが、とりあえず、その後の事故原因解明状況を整理すると。

  • 列車は108km/hでカーブに進入。
  • カーブ直前で緊急ブレーキがかけられた後、脱線。
  • 線路上の粉砕痕は敷石を跳ね上げたもので、置石は存在しなかった。

 ですね。果たして108km/hで300R曲線に進入すると脱線するのか…が、今後の事故原因解明の焦点となるのでしょう。例えばそこに、昨今の軽量化車両に採用されている(軽量&ローコストの)ボルスタレス台車が遠心力で浮き上がり現象を起こすこと…が、副次的に作用していたとしたら、それこそ全国各社の軽量化車両がすべて危険だということになるわけで。大問題になりますね。
 と、本当は“その4”では軽量化車両について書こうかと思っていたのですが、それより何より…。

 個人的にいちばん驚いたのは、さしかかった対向列車(特急《北近畿》3号)が、事故現場の約100メートル手前で緊急停止していたこと。それ自体は驚くべきことではないし、万が一、突っ込んでいれば…と騒ぎ立てるのは、メディア側もネタを作り過ぎている感がしないでもないところ。
 ただ、驚くべきは、その緊急停止が閉塞信号機の注意(黄色)信号によるものだったという事実。閉塞信号機とは、閉塞区間に複数の列車が入り込まないようにするもの。つまり衝突防止システムの一環なわけですが、たまたま脱線した5418Mの4両目が対抗(下り)線を横切るような形で停止したため、レール上に異常信号が流れたということらしく…うーん。脱線状況によっては作用しなかった可能性もあり、これこそ“ケガの功名”というものでは。
 しかも、その緊急停止した《北近畿3号》の運転士が防護無線を使用したため、上りの後続列車が現場まで約300メートル付近で緊急停止したとのこと。
 って、ちょっと待て。事故後のJR西日本の発表では、5418Mの車掌が脱線後に防護無線で周囲の列車を止めた…はずだったのでは? オーバーランを過少申告する口裏合わせはともかく、事故後に車掌はやるべきことをやって多重事故を防いだのだな…と思っていたのですが、違ったの!? その脱線から数分間、運転指令と車掌との間でどのような連絡が取られていたのかは不明で、他列車に何も指令が飛んでいなかった事実が発覚。これって、とんでもないことですよ。非常時の対応が、まるでできていなかったことになるので。多重事故にならなかったことが奇跡に近い。
 起こってしまった事故はともかく、その後の対応に、安全確保に最善を尽くすことが、旧国鉄時代から築き上げてきた鉄道マンの歴史だったはず。旧国鉄を美化するつもりは毛頭ないですが、かつて長い歴史の中には、そうした“個々の鉄道マン”による勇気ある行動が、多くの人名や物流を守ってきた過去があるわけです。鉄道の安全神話は、すべてその歴史から生まれてきたものなのですから。

 が、今回の事故ではそれらが一気に否定されるような経緯ばかり表沙汰になってくる。
 たまたま当該列車に乗り合わせていた運転士(尼崎電車区)が乗客救出に協力しないまま(上司から出勤指令を受けて)現場を立ち去ったり、別の運転士(森ノ宮運転区)が現状報告をしているにもかかわらず、それを受けた上司は何ら緊急指令も発せずに放置したり…。当日、天王寺車掌区でボーリング大会や宴会が行なわれていたことがメディアで叩かれていますが、それよりも、これらの“上司”の対応のほうが問題なのでは?
 そんな一面にも、他の何よりも“予定通りの”業務遂行が優先される、というJR西日本の体質が見て取れるわけで。また、これらの事実は当日中に大阪支社に報告されたものの、それが本社に伝えられたのは事故から8日後の5月2日のこと。それも、一部マスコミからの問い合わせで初めて発覚したというのだから…同社に深く根付く隠蔽体質がうかがえるところ。

 考えてみれば、事故直後に“踏切事故”と発表したり、現状が明らかになった途端、今度は粉砕痕を大々的に公開し、置き石が脱線原因であるかのように示唆したり…事故後のJR西日本の対応は、どれもこれも責任逃れの隠蔽体質、と批判されても仕方のないものばかり。こうした悪しき面だけは、旧国鉄の体質をそのまま受け継いでいるわけで。
 批判されている“日勤教育”にしても同じこと。あくまで想像ですが、その日勤教育の内容も、該当社員が組合員かどうかで“教育”の内容が違ったんじゃないかとも。草むしりやいじめなんて、旧国鉄時代の労組潰しそのものじゃないですか。
 まぁ、現在の同社上層部は皆、旧国鉄官僚ですからねぇ。これら経営陣が一掃されるまでは、本質的な体質改善は無理かと。
 そして、“教訓”は何も生み出さない。

(その5へ続く)

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