ふるさと銀河線、遂に廃止決定

[Traffic] Railway

 北海道の北見と池田を結ぶ、第3セクター最長路線でもあるふるさと銀河線(北海道ちほく高原鉄道)の廃止が、いよいよ決定事項に。
 同社サイトは、28日付けで「緊急告知」を掲載。

急告

 昨日、弊社第84回取締役会におきまして、ふるさと銀河線を廃止することとし、4月17 日に北見市内で開催予定の株主総会にその旨提案することが決議されましたが、その経緯につきましてご説明いたします。

 平成15年3月、道、沿線自治体、弊社を構成員とする「ふるさと銀河線関係者協議会」が設置され、ふるさと銀河線の運行の可能性について協議が進められてまいりました。
昨年6月に開催された第6回協議会における合意によりまして平成17年度の運行は確保されましたものの、協議会は、昨日開催されました第13回をもって、平成18年度以降の運行に対する支援について合意されないまま終結するに至りました。
また、当社では、さきに道、沿線自治体に対し平成18年度以降の運行に対する補助要請を行いましたが、一部の自治体から支援は困難との回答がありましたほか、支援可能と回答があった自治体からも、具体的な金額の提示はありませんでした。
ふるさと銀河線につきましては、今後とも輸送人員の増加が見込めず多額の経常損失が想定されますほか、旅客の安全輸送やサービスの面で必要とされる車両更新や老朽化設備改修などへの多額な投資が必要となりますが、当社のみの力でふるさと銀河線の運行を続けることは困難ですので、特別清算となることを避けるため会社として鉄道事業廃止の手続に入らざるを得ないと判断した次第です。
このことは、当社としましても苦渋の選択であり、沿線住民の皆様に多大なご不安やご不便をおかけすることとなりますことにつきまして、心からお詫び申し上げる次第です。
なお、昨日の決議を受けて、臨時株主総会を4月17日午後1時30分からきたみらい農協北見市支所において開催することとなり、同株主総会で決議されれば、鉄道事業法に基づく廃止届を国土交通大臣(北海道運輸局)に提出することとなります。

 事実上、2006年度中の廃止が決定したということですね(寂)。
 旧国鉄・池北線から第3セクター化されて以来、絶えず将来が不安視され、廃止は免れないだろうと言われ続けてきたものの…。遂に来たか、という感じですねぇ。

 旧国鉄から数多くの路線が第3セクターに転換された中で、初の廃止となったのはのと鉄道(旧国鉄・七尾線):穴水-輪島間(2001年3月末で廃止)。同鉄道は2005年3月31日に穴水-蛸島間(旧国鉄・能登線)も廃止し、生き残った七尾-穴水間を除く路線の大半が廃止という結果になりましたが、全線廃止は今回の北海道ちほく高原鉄道が初めて。
 いずれも、(第3セクターへの)転換交付金や経営安定化基金などを食い潰した後は、存続が難しいといわれてきましたからね。ある意味、廃線は想定内だとも…。
 北海道ちほく高原鉄道の場合は、2003年11月の時点で既に、最大株主の北海道が廃止とバス転換を正式提案していました。経営安定化基金が底をつく2006年度以降、沿線自治体の負担が大きくなりすぎるという予測は的確だったわけです。
 その後の方針は、2004年2月に財政支援の打ち切りを決定し、2005年までは存続させ、2006年以降に向けて経営改善の目途が立たなければ廃止というもの。いわば猶予期間だった数年間を経て、2006年3月末で廃止という予定調和的な終焉が現実味を帯びてきたと。
 鉄道存続に向けて発足したふるさと銀河線関係者協議会でも、「廃止やむなし」という意見が大筋のようですからね。沿線自治体の中には、あからさまに赤字補填=援助負担を嫌がるところもあるらしく…。

 国鉄が民営化された際、赤字路線を一気に廃止しようとしたJR北海道に対し、北海道が長大4路線(名寄本線・天北線・標津線・池北線)の存続を強く要望したことも、もはや昔話。名寄本線と天北線、標津線は何事もなかったかのように廃止され、かつて路線存続を訴えた北海道も、今や第3セクターに生まれ変わった池北線を見捨てたと。
 北海道としては、冬季の代替交通手段や過疎化問題など特殊事情を抱える道内ローカル線は、国が路線維持に責任を持つべきだと突っぱねただけでしょうが。地方自治体に委ねられても維持しきれないことは、国鉄の民営化当時から訴えていたわけですしね。当時の横路知事と社会党、そして自民党という、政治問題も大きく絡む裏事情でしたが…。

ふるさと銀河線(北海道ちほく高原鉄道)
  • 明治40年 池田〜網走間の鉄道建設工事着工
  • 明治43年 池田〜淕別(現・陸別)が開通
  • 明治44年 淕別〜野付牛(現・北見)間が開通
  • 大正元年  札幌方面と網走とを結ぶ網走本線として全線開通
  • 昭和07年 網走へのメインルートとして現・石北本線(旧・石北線)が全線開通
  • 昭和36年 網走本線から池北線に改称
  • 昭和57年 第2次特定地方交通線に選定される(第2次赤字廃止対象路線に)
  • 平成元年 第3セクター転換、北海道ちほく高原鉄道として開業

 川上駅 川上駅2

 分線駅 分線駅2
 【↑ (上)ふるさと銀河線・川上駅 (下)同・分線駅 *2004年9月撮影】

 気がかりなのは、今回の動向が、赤字にあえぐ第3セクター路線の廃止を加速化させないかということ。
 廃止問題が取り沙汰される度に結論が持ち越しになっている、秋田内陸縦貫鉄道(旧国鉄・阿仁合線/角館線)あたりは、特に…。開業(第3セクターへの転換)時期が早い=基金の枯渇も早い=廃止も早い、などという安直な結末だけは避けて欲しいところ。秋田県は後ろ向きな姿勢に見えますが、存続に向けた沿線自治体の結束は固く、住民運動も活発なようなので、そう簡単には廃止されないとも?
 北海道ちほく高原鉄道の場合、存続に向けた沿線自治体の足並みが揃わなかったことも、廃止決定を早めた要因でしょうからね。
 3月15日に開催された《秋田内陸線沿線地域交通懇話会》最終会議では、
 「存続の可能性を探る最後の機会として、県と沿線自治体、内陸鉄道、地域住民が一体となり、再生計画を策定するよう提言する」
 ことになったとか。
 この懇話会は、秋田県が沿線8町村に呼びかけ、2003年12月に設立されたもの。それだけに、今回の最終報告は「いちおうの存続決定」だと考えても良さそうです。とは言え、地元自治体の赤字補填にも限界があり、解決すべき問題は山積み。利用者数の増加や増収手段など、根本的な問題に先が見えない限り、危機的状況は続くでしょうね。

 そう言えば、同線にもしばらく乗っていないなぁ。
 前回の乗車時は比立内-秋葉間(第3セクター転換後の新規開業区間)を往復しましたが、乗客は自分だけで…。

関連記事・リンク
  • 「存続」の報告書承認 秋田内陸線懇話会 新組織で再生計画策定へ  (2005.03.16/北鹿新聞
    (旧リンク先=http://www.hokuroku.co.jp/thismonth/20050316.html#Anchor297205)
  • 秋田内陸縦貫鉄道を助けてください! *リンク切れ(http://homepage3.nifty.com/kumanotaira-mura/help!%20moriyoshi-railway.htm)


2005.04.01、追記

 北海道ちほく高原鉄道の場合、最初から「廃止ありき」で存続問題が討議されていたようです。
 2004年春、北海道ちほく高原鉄道が道と沿線1市6町に「初めて」運営費補助の要望を行った際、応じる自治体は皆無だったそうな。北海道も沿線自治体も、援助打ち切り~廃止を前提に、「ない袖は振れない」という姿勢を貫き通したわけですね。経営が切羽詰まった状況になってから「初めて」援助を要望した同社の姿勢も疑問なら、鉄道存続への責任所在、運営方針、熱意といった沿線自治体の在り方にも目を向ける必要がありそうです。
 北海道ちほく高原鉄道は、資本金5億円のうち、2億円を北海道が出資。社長は神田孝次・北見市長が務め、各取締役は沿線自治体首長という典型的な第3セクター方式です。国庫からの第3セクター転換交付金、道と沿線自治体が負担した基金を合わせた経営安定基金は、実に81億500万円。その利息だけで、年間4~5億円の経営赤字を補って余るほどだったとか。
 で、その経営安定基金が底をついたから廃止? 一体、どんな経営・営業努力をしてきたのでしょうか。自らの腹が痛まない基金=税金を浪費
してきただけと批判されても、致し方ないような。
 結局、「何のための鉄道存続だったのか」という部分がクローズアップされてきそうですね。
 素人目にも、立派な国道や道道が併走し、険しい山間部や豪雪地帯を通るわけでもない路線で、鉄道の優位性を保ち続けられるかどうかは疑問でしたから。似たような状況の天北線や標津線はもちろん、豪雪エリアの峠越えが存在し、輸送人員が多かった名寄本線でも、あっさりと廃止されてしまったことを考えると…。

 これらの路線では、廃止後の転換バスに乗車する機会がありました。
 音威子府からの天北線・転換バスには、宗谷本線・北行き列車よりも遙かに多くの乗降客がいて驚かされたものです。また、名寄からの名寄本線・転換バスも、かなりの乗客数でした。
 いっぽう標津線・転換バスでは、中標津や別海付近に利用が限られている印象を受けましたね。標茶側との輸送流通の少なさ、起点として弱すぎる厚床など、かつての鉄道路線が輸送実態に見合っていなかったことも感じさせられたり。

 北海道ちほく高原鉄道に関しては、全線を乗り通したことも、北見エリアで並行する路線バスの利用経験もあり。こと北見文化圏に関しては、バスのほうが利用度が高く、利便性も高いと感じたものです。
 北見側から来ると、置戸での折り返しとなる列車が多く、池北線時代からのサミット:置戸-陸別間では運行本数が激減します。が、同区間の数少ない列車は想像以上の利用率で、驚かされたりも。併走するバス路線がないとはいえ、北見と十勝エリアの往来が、あれほど多いとは…。
 もっとも、乗客の大半は、陸別町内の各駅で下車してしまいましたが。そこでいったん減った(車内が無人と化すほどだった)乗客数が、足寄町管内で徐々に増え始め、その後は池田まで増え続けていくという。地図上(行政区分け)からイメージする利用者分布と、実際の利用実態が大きく異なる点に、同路線の特異性を感じたりもしたものです。
 陸別町は管轄こそ十勝支庁でも、距離的には池田や帯広より北見のほうが近いんですよね。北見は道内有数の中心都市ですから、池北線(北海道ちほく高原鉄道)が陸別までの広大な北見文化圏を形成していたとも考えられるわけで。
 逆に、併走するバス路線も増える北見・池田の両起点側では、輸送人員が意外に伸びず、鉄道依存度の低さも実感させられました。沿線中間部と両起点側では、鉄道に対する温度差が想像以上に大きいことも。第3セクター転換後に立派な地域コミュニティセンターとして生まれ変わった置戸駅や陸別駅などは、その象徴でしょうね。
 こうした(行政区分けを越えた)利用実態が、路線存続に生かされなかったことは残念です。自治体単位でしか物事を判断できない、第3セクター方式の弊害かもしれません。その特異性から、眠っているアイデアも少なくなかったと思うのですが。

 ちなみに。
 池北線の存続=北海道ちほく高原鉄道への転換に際しては、やはり政治力が働いていたようです。(当時の)武部勤・農林水産大臣が動いたことは、有名な話? 北海道開発・運輸両政務次官を務め、自民党の交通・内閣両部会長でもあった、バリバリの北海道&運輸族。しかも、選挙地盤は北見ですからねぇ。
 考えてみれば、廃止された名寄本線や天北線、標津線エリアからは、自民党の有力代議士など選出されていないわけで(苦笑)。

 また、足寄町内には木造ホームだけの無人駅が多く、国鉄時代には臨時乗降場だった、朽ちかけた駅も目立ちます。中には、周囲に人家が一軒しかない駅も…(どの駅かは想像できますが)。
 それがあの、鈴木宗男・元国会議員の実家だとは、日々雑感(http://blog.goo.ne.jp/take-1010/)というサイトで初めて知りました。

 第3セクター化での存続はもちろん、北海道ちほく高原鉄道の高速基盤化=札幌方面とを結ぶ直通優等列車の運行構想、帯広から足寄~北見方面へと伸びる高速道路など、この沿線に抱いていた疑問の多くは、そうした政治力を考えると納得できたりも。
 今回の廃止決定にしても、同様でしょうか。北見や池田(帯広)の両起点側からすれば、廃止を機に代替という大義名分で高速道路建設を進めてもらえたほうが、はるかに「おいしい」話ですから。
 その帯広や十勝を地盤とする政治家は、中川昭一・経済産業大臣。それこそ、父親である元科学技術庁長官・中川一郎の亡き後、鈴木宗男氏と跡目争いを繰り広げた人物じゃないですか…。
 いやいや、焦臭すぎますってば。
 結局、こうした政治の力が、池北線と北海道ちほく高原鉄道の運命を翻弄してきたのでしょうね。
 経営改善の見込みがない長大赤字路線に、感傷的な想いで声高に廃止反対を訴える気はありません。ただ、何のための路線存続だったのかは、各地で喘ぐ第3セクター路線の今後を考える意味でも、重要なのでは。

 存続問題の渦中にあった陸別町は、昨年9月、RALLY JAPANを観戦するため久々に訪れました。陸別駅を観戦者に開放するなど、地元の人たちの暖かさや歓迎ムードは心地よかったですね。おそらく、訪れた観客の大半が「陸別って、いいところだなぁ」と思ったことでしょう。
 いっぽう、同じく観戦で訪れた足寄町は、住民の顔など見えない「お役所イベント」的な雰囲気で。陸別町とは対称的だった分だけ、観客の怒りを爆発させるトラブルが頻発したのかもしれません(苦笑)。
 それはともかく、北海道ちほく高原鉄道には、同線を観戦アクセスに利用できないかとの問い合わせも数多くあったとか。が、観戦に使える臨時列車等の運行もなければ、観客の利便性を図る施策や配慮も一切なし。沿線で世界的な一大イベントが開催されたにもかかわらず、「まったく、何も」為されなかったこと自体、驚きですよね。
 問い合わせた人たちも、同社の対応には呆れたそうです。その中には、鉄道存続に少しでも役立てばと、考えた人もいたとのこと…。
 などと書いている自分も、いろいろ調べた結果、鉄道利用を断念してクルマ観戦となった一人ですが。
 当日の各会場には、道内のレンタカーが底をついたのではないかと思うほど、「わ」ナンバー車が集結していました。そうしたレンタカー利用者の1~2割でも、鉄道で観戦に訪れていたなら…。
 まさに、「経営努力の欠片もない」と言わざるを得ないですね。

 帯広から北へ延伸中の道東自動車道は、足寄から訓子府へ抜け、北見に向かうルートが予定されています。
 北海道ちほく高原鉄道の経営主体でもある北見市は、「(鉄道を廃止する代わりに)早く高速道路を伸ばしてくれ」な立場。
 逆に、沿線自治体の中でも路線存続に熱心だった陸別町や置戸町は、道東自動車道のルートから外れてしまう立場。
 いやもう、これだけを見てもね…。

 昨秋のRALLY JAPAN観戦以来、愛着を抱くようになった陸別町が、鉄道の廃止で廃れてしまうのでは忍びない。
 今は、それが気がかりです。

関連記事・リンク

コメント

  1. 匿名 より:

    第3セクター

    関連するブログ記事から内容の濃いものを独断で選んでみました。 いろいろなご意見が

  2. take-1010 より:

    どうもはじめまして。

    TBありがとうございました。
    ブックマークさせてもらいます。

    しかし数値とか分析が細かいですね。
    こっちは雑に書いたので尚更すごい。

    今ようやく全8回脱稿したところです。
    長いなぁとちと反省。

    アノ駅は大誉地駅です。
    ちなみに近くの踏み切りは「鈴木踏み切り」。
    こっちのほうが有名かもしれませんね。

    今後もよろしくおねがいします。

  3. 匿名 より:

    北海道ちほく高原鉄道 廃止へ

    関連:
    asahi.com:銀河線 来春廃止へ
    北海道唯一の第三セクター鉄道である、北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線(長い…)が来年春にも廃止されることが事実上決まったとか。
    関連のリンク先によると、これが決定したのは27日の取締役会上のことで、今後は4月17日の臨

  4. reibo (管理人) より:

    コメントありがとうございます。やはりあの駅ですか…。踏切名もそのものズバリなんですね(苦笑)。とても読み甲斐のある内容で、今回の件に関心を抱いた人にはぜひ読んでもらいたいと思いましたので、勝手ながらリンクまで貼らせていただきました。こちらこそよろしくお願い致します。

  5. 匿名 より:

    ふるさと銀河線

    知りませんでした。北海道ちほく高原鉄道「ふるさと銀河線」の廃止が決まっていたなんて。これからの世の中合理性のみが重要視されていくのかなぁと思います。どこへ行くにも車かバス。ただ移動するためだけのもの。移動することが目的なのではなく、乗ることが目的の乗

  6. 匿名 より:

    第3セクター

    関連するブログ記事から内容の濃いものを独断で選んでみました。いろいろなご意見があ…

  7. hiro より:

    ともかく、廃止決定を覆す活動したいと思います。

  8. 匿名 より:

    2006年12月末に神岡鉄道廃止へ〜ふるさと銀河線ネタも含めて。

    来年も鉄道ファンにとっては見逃せない一年になりそうです。 神岡鉄道、来年12月…

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