パッチギ!と『イムジン河』

[Diary] Misc

 井筒和幸監督作品『パッチギ!』(配給元:シネカノン)を見に行く。
 この日は第17回東京国際映画祭特別招待作品としての先行上映(@シアターコクーン)で、監督、出演者(塩谷瞬・沢尻エリカ・高岡蒼佑)の舞台挨拶も。本公開は2005年1月下旬から。
 ヒロイン役の沢尻エリカは、ずいぶん自然な演技ができるようになりましたねぇ。ある意味では存在感が薄い、目立たないヒロインぶりに、観客は作品の本質を崩さずに見ることができる。アクが強いコにアクのない演技をさせるというミスキャスティングが、反って功を奏した好例なのかも。

 舞台設定は1968年の京都。在日朝鮮人問題をテーマに置きつつ、在日少女・キョンジャ(沢尻エリカ)と府立高校生徒・松山康介(塩谷瞬)の恋愛を描くストーリー。
 フォークル(ザ・フォーク・クルセダーズ)の『イムジン河』が、そのキーに使われている。
 原曲『イムジン河』(作詞:パク・セヨン/朴世永、作曲:コ・ジョンハン/高宗漢)は、1960年代に北朝鮮で作られた曲で、朝鮮半島38度線による南北分断の哀しみを歌ったもの。北朝鮮で1991年に制作された映画『バード』では、主題歌にも使われている。
 日本では、松山猛の訳詞でザ・フォーク・クルセダーズが1968年にレコード化するはずだった。が、シングル盤13万枚をプレスした発売直前になって、当時の情勢と関係各方面の圧力から発売元:東芝EMIが発売中止を決定。放送メディアもオンエアを自粛したが、ライブステージでは歌い継がれてきたという幻の曲。
 後の1995年には、国内オールディーズ研究ミニコミ誌『REMEMBER』を発行していたSFC音楽出版が母体のソリッドレコード(現:ULTRA-VYBE)から、この曲を収録したフォークルのアルバム『ハレンチ+1』(オリジナル時のタイトルは『ハレンチ』)がCD化・再リリース。2000年の南北首脳会談を機に、『イムジン河』が「統一を願う歌」として脚光を浴びたことから、リマスター盤CD『ハレンチ』も2002.03.21にアゲント・コンシピオから発売されている。

 フォークルって、当時は「ザ・フォーク・クルセイダーズ」と呼ばれていたと思うのだけれど…。
 いつの間にか日本語読みが修正され、「クルセダーズ」になったんですね。

 個人的には、「井筒作品」とか「沢尻エリカ」のキーワードではなく、「フォークル」や「イムジン河」で引っかかる部分が大だったり。彼らのファーストアルバム『紀元弐千年』も、レコード盤で所有していますから。もう、ボロボロですけれどね。
 なお、『イムジン河』の原曲タイトルは『リムジン河』が正しいとする説もあります。

 映画としては、素直に笑い、感動し、泣くという井筒作品らしいテイストに満ちたもの。個人的には、ちょっと笑い、わりと素直に感動し、泣きはしなかった感じでしょうか。強引な感情訴求が気になる井筒作品としては、珍しく素直に、抵抗感なく入り込めた印象も(苦笑)。
 でも、あの美しすぎる終わり方はなぁ…。それも「井筒作品らしさ」でしょうけれどね。
 ちなみに「パッチギ」とは、ハングル語で「突き破る、乗り越える」、あるいは「頭突き」の意味だとか。ダブル主人公・アンソン(高岡蒼佑)が頭突きを連発する喧嘩シーンで、両方の意味を訴えかけようとする手法も「らしさ」ですよねぇ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました