四国八十八ヶ所お遍路の地図『四国遍路ひとり歩き同行二人』『Shikoku Japan 88 Route Guide』『みんなで作った遍路地図』を比較

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思い立って四国八十八ヶ所お遍路を始めるにあたり、寺院88ヶ所(+別格20霊場)の場所や遍路ルート等が記載された地図ガイドブックを揃えました。
定番らしい3種類、『四国遍路ひとり歩き同行二人』『Shikoku Japan 88 Route Guide』『みんなで作った遍路地図』を入手したものの一長一短で、「うーん…」となったポイントを比較してみます。

 遍路地図
 【(左から)『四国遍路ひとり歩き同行二人』、『Shikoku Japan 88 Route Guide』、『みんなで作った遍路地図』】

遍路地図の定番『四国遍路ひとり歩き同行二人』

もっともメジャーなガイドブック。歩き遍路のみならず、車遍路の人も多くが持っているのだとか。
【地図編】は、寺社仏閣の他に宿泊施設、お遍路さん向け休憩所、トイレ、食事処、スーパー&コンビニ、ホームセンター、バス停、郵便局など、歩き遍路に必要な情報を記載。ガソリンスタンドが載っているので、車遍路にも有用かと。
昔から定番といわれるだけあって、見やすさは3書の中でもいちばん。冒頭の全体図もわかりやすく、お遍路の行程を考えるにも便利なので、お遍路を始めるなら持っておきたい一家に一冊的なバイブルといえます。
宿泊施設の住所・電話番号は、巻末に一覧表形式で記載。宿泊施設を探す際は、地図該当ページと巻末一覧表を行ったり来たりに。その分、地図は情報が整理されて見やすいわけで、一長一短な面でしょうか。
明らかな欠点といえるのが、地図の作り方。ページ毎に北の向きがバラバラで、南や東・西が上だったり、地図全体が左右斜め方向だったり…。「地図は北が上」の指針を無視しているので、普段から地図を見慣れている人ほど混乱します。違和感と狂いまくる方向感覚から、イラついて腹立たしくなること確実(苦笑)。
進行方向に合わせて、地図の向きを変えて見るような人であれば平気なのでしょうが…。
また、縮尺がページ毎にバラバラで、距離感がつかみづらいこともネック。ただ、さほど広くないエリアに複数の寺院が点在していたり、逆に札所と札所の距離が長いエリアでは、縮尺を変えてくれたほうが俯瞰しやすい=わかりやすいケースも。おそらく、縮尺が大きい(拡大図)・小さい(広域図)のどちらが便利なエリアか、適宜判断しながら作られたのでしょう。その意味では、むしろ長所だともいえます。
なわけで、地図として考えるなら、地図作りの常識や法則を無視しまくった異端児といえそうな。そもそも、地図なのに右開きな時点で、常識外なわけで。市販の地図を見ればわかりますが、全て左開きですから。
個人的には、現地へは持って行かず、事前に行程を考える際、他の地図と併用しながら使うのがベターかと。それでも使いたい、見やすさや良さがあるガイド地図ではあります。
【解説編】のほうは、お遍路に関する各種情報や心得などをまとめたもの。ネット情報で事足りる内容が大半なので、購入しなければならないかと問われれば…。

外国人お遍路さん向け『Shikoku Japan 88 Route Guide』

上記の『四国遍路ひとり歩き同行二人』を基に、外国人向け英語版として製作されたガイド地図。
といっても同書は各種情報のベースになっているだけで、地図の見た目はだいぶ違います。
何より異なる点は、全ページとも北が上なこと。縮尺も基本は同じで、広大なエリア俯瞰が便利な場所のみ小縮尺。もちろん左開き。まさに「正しい、真っ当な地図」。著者・松下直行氏は「35年以上にわたって地図制作を生業としてきた」そうで、なるほど。
各種情報はベースの『四国遍路ひとり歩き同行二人』と同等ですが、惜しむらくは郵便局。地図上に手紙マークがあるだけで、『四国遍路~』に記載されている局名は省略。さらに、簡易郵便局は存在自体が無視されてしまっています。お遍路しながら旅行貯金も…な自分には、減点ポイント。版型を小さくし、宿泊施設などの電話番号を地図内に記載した分、局名や簡易局の記載が削られてしまったのでしょう。
逆にコンパクトな版型が、外で(歩きながら)手持ちするにはピッタリ。片手でも開ける利便性は、現地で実感させられます。見やすさ重視で大版の『四国遍路ひとり歩き同行二人』とは、対照的だったり。
使われている紙も、薄くペラペラな『四国遍路ひとり歩き同行二人』とは対照的な厚いコート紙。雨中の歩き遍路を想定した配慮かと。
ただ、版型を小さくした分だけページ数が増え、紙も厚くなった結果、『四国遍路ひとり歩き同行二人』より重くなってしまっています。
ちなみに、地図上の地名や施設名には日本語も併記(解説文は全て英語)。地図を使うだけなら日本人でも問題ありませんが、不要な英語表記が併記される分、ごちゃごちゃして見やすいとは言い難いかも。
1,980円と手を出しやすい価格設定は、著者いわく「お遍路に来てくれた外国人のため」利益無視で提供しているとか。紙代が高騰している昨今、自主製作形態でこの価格は、原価どころか赤字でもおかしくない良心的なものでしょう。

歩き遍路に特化した新興勢力『みんなで作った遍路地図』

長らく上記2書が定番だったらしいお遍路地図ガイド界に現れた、新興勢力(笑)。歩き遍路のポータル情報サイト:みんなのへんろが製作・発行し、実際に歩いた調査や、歩き遍路をした人たちからの情報提供をまとめたもの。
バイクに乗る人なら、ツーリングマップル(通常版)の版型といえばサイズ感がわかりやすいかも。コンパクトな上に各160ページと薄いため、持ち運びや現地での利便性は3書でいちばん。
その代わり、上巻(徳島県・高知県)・下巻(愛媛県・香川県)・別巻(別格20霊場)の3冊構成に。例えば高知県と愛媛県を区切り打ちするなら、上下巻とも必要。別格20霊場も巡るなら計3冊を持ち歩かなければならず、結果的に薄く軽いメリットが失われがち。
100ページと薄い別巻は内容も薄っぺらで、「これを別巻にする必要があるのか?」と疑問。多少ページ数が増えても、別格20霊場は上下巻に収録して欲しかったところ。
紙質は3書の中で中間的な、薄めのコート紙。対候性(雨濡れへの強さ)も、『Shikoku Japan 88 Route Guide』>『みんなで作った遍路地図』>『四国遍路ひとり歩き同行二人』の順かと。
地図内容は独自のスタイルで、見やすいかどうかは好み次第? 製作構想時の絶対条件が「北が上」「同じ縮尺」だったそうで、ある意味、長らくバイブル化していた『四国遍路ひとり歩き同行二人』の欠点克服がコンセプトだったのでしょう。当然、地図としては「当たり前のことが当たり前にできるもの」となっています。
ただし、本の作り方はなぜか右開き。自主製作(自費出版)らしい素人作り感も否めず、総じて完成度が高いとは言い難い面も。
寺社仏閣、宿泊施設、お遍路さん向け休憩所、トイレ、食事処、スーパー&コンビニ、ホームセンター、バス停、郵便局といった情報掲載は他2書と同じものの、ドラッグストアが掲載されているのは、基本構想が新しい本書ならでは。歩き遍路の場合、ドラッグストアは生命線にもなるでしょうから。
郵便局は局名まで記載されていますが、一部に漏れ(局自体の欠落)が見られるのは残念。簡易郵便局が無視されているのは、『Shikoku Japan 88 Route Guide』と同じ。郵便局に関して完璧なのは、『四国遍路ひとり歩き同行二人』だけなんですよね…。
また、歩き遍路への特化度は3書でいちばん。歩き遍路のポータル情報サイトから生まれただけに、バイクや車で巡る場合、逆に使いづらさを感じることも。いわゆる【遍路ころがし】的な歩き遍路道が何本もある山岳寺院へのルートは、山道(徒歩道)の案内に重点が置かれている分、車道の位置や繋がりを確認しにくいんですね。他2書と見比べなければ、ルートがよくわからない札所も見受けられます。
広域マップを俯瞰したいエリアでは、歩き遍路に特化した詳細図ばかりでルート・行程のイメージが湧きにくい一面も。結局、他2書を併読しなければ「んー?」となってしまうことがしばしば…。
まぁでも、最大のネックは価格でしょうね。自主製作(自費出版)物に価格云々をいうのは酷ですが、上下巻+別巻の3冊を揃えると5,500円。店頭で確認もできない通販専用だけに、購入には勇気が必要(苦笑)。例え「なかなか良さげ」だと感じても、決して安くはないわけで。コンパクトさ(薄さ)項目でも触れたように、せめて別格20霊場(別巻)を上下巻に収録し、2冊で済むようにしてくれていれば…。

どれも一長一短で決め手に欠ける遍路地図

とまぁ、3書を購入して見比べたものの、結局は一長一短で「これ1冊あればOK!」なモノがない…。
とりあえず『四国遍路ひとり歩き同行二人』は自宅での下調べ用とし、現地へ持って行くのは『Shikoku Japan 88 Route Guide』と『みんなで作った遍路地図』に。旅先では何よりコンパクトさなのと、現地で動くほど「地図は北が上」の重要性を痛感させられるので。
持ち運ぶ2書には、郵便局の局名や簡易局を書き込み済。その手間が膨大で、途方に暮れかけましたが…。なんで(『四国遍路ひとり歩き同行二人』のように)ちゃんと載せてくれないかなぁ…。

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