高知県と大分県を結ぶ宿毛フェリーが運航休止状態に

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高知県宿毛市と大分県佐伯市を結ぶ宿毛フェリー(http://www.sukumoferry.com/)が、2018年10月19日から運航休止状態になっているそうな。
同社のホームページでは、

運航休止のお知らせ

平成30年10月19日から燃料高騰の為、当分の間、全便運航休止となります。
ご利用予定の皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、予めご了承願います。

と発表されているだけ。いきなりの運休だったらしく、影響が各方面に波及しているとか。
報道の要点をまとめると…。

  • 10月19日の宿毛港発00:30/第1便より運休
  • 燃料A重油の値上がりを受けて資金繰りが悪化し、10月18日に運航休止を決め、翌19日に四国運輸局に届け出
  • 船長をはじめ、操船に関わる海上社員15人全員が10月末日付けで解雇
  • 宿毛市が航路存続の意向確認をしようにも、県外の同社役員と連絡がつかない
  • 就航船「ニューあしずり」は片島港(宿毛港)に係留中。2019年3月に定期検査切れなので、それまでに同社が対応しなければ法的に運航できなくなる
  • 運休の最大要因は燃料高騰。加えて船体の老朽化・故障・修繕費、台風の影響による営業損失、船員雇用問題なども
  • 高知県から県内トラック運送事業者にフェリー利用促進の補助金が出されており、トラックの利用実績は低くなかった?

なんかもう、夜逃げ同然なのですが…。同社がある宿毛市や高知県も「寝耳に水」で、何とか運行継続させたいものの、事業者にその気がなくてどうしようもない…的な図式でしょうか。
もちろん、実際のところはわかりません。行政からの補助に「おんぶに抱っこ」で、企業努力を怠ってきたツケがまわる。逆に、事業者がSOSを発信していたのに、市や県が事態悪化を見て見ぬふり。どちらも、よく目にする構図ではありますし。いずれにせよ、このテの問題は「にっちもさっちもいかない」最終局面を迎えるまで、表面化しないことが多いんですよね。
いっぽう佐伯市サイドからの情報は皆無で、四国側と九州側の温度差も明確に。事業者も船体の所属も四国側ですし、九州側からすれば「そんな航路どうでもいい」のかも…。
青森県・大間と北海道・函館を結ぶ津軽海峡フェリーが、地域の死活問題として存続に熱心な青森県側と、クールな対応の北海道側…という図式だったことを思い起こさせます。

宿毛フェリーは四国南部と九州南部を結ぶ貴重な航路であると同時に、高知県と県外を結ぶ航路としても、今や唯一のもの。かつて高知県からは、関西や首都圏とを結ぶ複数の中・長航路が発着していたんですけれどね。
なので高知県としても、このまま廃止は避けたいのでしょうが…。過去の経緯もありますし。

  • 宿毛-深浦-船越-佐賀関-大分-別府の「宿毛汽船」から分離する形で、1971年から「宿毛観光汽船」が運航を開始
  • 70年代には1日6便を運航し、利用者数もピークに
  • 1985年、現在の「ニューあしずり」が就航
  • 90年代末期から業績が悪化、2002年には宿毛市が借入金を損失補償
  • 2004年1月に宿毛観光汽船が自己破産、運航休止
  • 計画頓挫した「土佐・佐伯フェリー」など紆余曲折を経て、2004年12月から「宿毛フェリー」として運航を再開

(Wikipediaより抜粋・要約)

ちなみに運休前の運航ダイヤや各種情報は、以下の通り。

*運航ダイヤ(所要:3時間10分)
第1便 宿毛港00:30-03:40佐伯港04:10-07:20宿毛港
第2便 宿毛港08:00-11:10佐伯港12:00-15:10宿毛港
第3便 宿毛港16:00-19:10佐伯港20:50-00:00宿毛港

*就航船
ニューあしずり
総トン数:999トン 主機関:1800馬力×2基
全長:73.62m 幅:13.6m
航海速力:16.5ノット 最大速力:17.5ノット
搭載車両数:普通乗用車60台またはトラック(11トン)12台
車両入口:高さ3.85m、幅3.7m

*運賃
二等客室 大人:2570円(小人:1290円)
一等客室 大人:3600円(小人:1800円)
ファミリー室(客室使用料金):5140円 ※2等客室料金別途必要

*航送料金
特殊手荷物運賃(運転者運賃を含まず)
自転車・小児用車輌等:1,340円
原付及び二輪自動車(125cc以下):2,570円、二輪自動車(125cc超):4,110円
車輌運賃(運転者運賃を含む/乗用車クラス)
3m未満:7,410円、3m-4m未満:9,930円、4m-5m未満:12,240円

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個人的には、以前から「廃止される前に乗っておきたい」と思う航路だっただけに、機会を逃して「うーん…」。
首都圏から九州南部へという観点で考えると、川崎-宮崎間の航路が廃止された後は、

  • 東京からオーシャン東九フェリーで徳島へ
  • 四国内を自走(ちょっと観光)して、宿毛から宿毛フェリーで佐伯へ
  • 大分県といっても宮崎県境に近い佐伯から、宮崎・鹿児島方面へ

なんてツーリングルートが現実的だったんですよね。そのうち実現させようと思っていたのに、もはや後の祭り…。
東京からの視点だと、同航路の廃止により、四国南西部と九州南部がさらに遠いエリアという印象にも。四国南西部は、行き止まりでピストンするしかない袋小路的なエリアに。袋小路というには広大で、かつアクセスも不便なエリアだけに、ますます訪れる機会が失われそうな。
地味な航路だった宿毛フェリーですが、見方によっては重要な航路だったとも。だからこそ、航路が開設されたのでは。

地味=観光やツーリング利用が少なかった理由としては、やはり約3時間の所要時間が中途半端だったことですかね。早くもなければ、船旅というほど長くもなく、一夜を明かす深夜便的な使い方にも中途半端なので。
四国と九州の海上移動といえば、よりメジャーなのが愛媛県と大分県を結ぶフェリー航路。

  • 国道九四フェリー 三崎-佐賀関 所要:70分/運賃:1,070円
  • 宇和島運輸フェリー 八幡浜-別府 所要:2時間50分/運賃:3,100円
  • 宇和島運輸フェリー/九四オレンジフェリー 八幡浜-臼杵 所要:2時間25分/運賃:2,310円 *同航路を2社が別々に運航

所要時間を踏まえた単純な運賃比較なら、宿毛フェリー(所要3時間10分で2,750円)のほうが割安なんですよね。短時間で安い三崎-佐賀関航路や、別府がポイントになる八幡浜-別府航路はともかく、2社で7便ずつ計14便も運航されている八幡浜-臼杵航路と、ここまで差がつくとは…。
宿毛フェリーと八幡浜-臼杵航路を比較すると、旅客運賃や車の航送料金に大きな差はナシ。ただ、二輪車の料金はけっこう違いました。

  • 125cc未満 宿毛フェリー:2,570円/八幡浜-臼杵航路:1,540円
  • 125cc超 宿毛フェリー:4,110円/八幡浜-臼杵航路:750ccまで2,260円、750cc超2,980円

ツーリングライダーから敬遠されるのも致し方なし? というか、宿毛フェリーの二輪料金は高すぎる…。県からの補助金が、二輪車には出なかったとか?

何にせよ、廃止航路が復活する前例は、ほぼありません。「運休」段階なら可能性が残されているともいえ、どうなりますか。
運航が再開されれば二度目の復活となるわけで、不死鳥フェニックス航路などと話題になりそう? (注目を集めるなら「ゾンビ航路」とか…)

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