東日本フェリーが、11月末までに国内フェリー運航事業から事実上の撤退をするらしい。。。
いったんは会社更生法を申請した同社がリベラに吸収合併され、新たに成立したのが2006年10月のこと。その後は、豪華高速船:ナッチャンRera(2007年9月就航)とナッチャンWorld(2008年5月就航)を青函航路に就航させ、起死回生を狙ったわけですが…原油高騰もあるのでしょうねぇ、見事に失敗したと。報道によると本年度の赤字見込みは約60億円で、うち、青森−室蘭航路が8億円、函館−大間航路が2億円の赤字見込み…てことは、青函航路だけで52億円の赤字!?
こうなったらヤリ玉に挙げられるのは必須のナッチャン就航は、誰の目にも疑問視されるものでしたからね。実際に、青函航路ではトラック輸送が他会社や縮小された一般フェリー便に流れて満車状態、いっぽうのナッチャンはガラ空きで、狙ったはずの一般客利用も底冷え状態では…。
従来フェリー航路の所要時間を約半分に短縮し、青森−函館間を1時間45分で結ぶ…という売りも、実際には遅延が続出し、所要時間も「2時間〜2時間半」というアバウトなものに変更せざるを得なくなり…。しかも運賃は、エコノミー5,000円、ビジネス6,000円、エグゼクティブ10,000円。さらに9月からは、原油高騰のためそれぞれ6,500円、7,800円、13,000円に値上げ。いっぽう、JRの函館自由席往復きっぷ(JR東日本)、青函往復きっぷ(JR北海道)なら、自由席利用限定ながら往復で5,500円。港へのアクセス問題もあり、徒歩の一般客が進んで利用するとは到底思えない…。
個人的には、航空機のファーストクラスの概念を持ち込んだ高速フェリーというのは、興味深いものではあります。行き詰まったフェリー業界への新風と言うか、そのために一隻90億円とも言われる新造船を2隻も導入した英断は、ある意味で評価されるべきだとも。
ただ、それを青函航路で為す意味があったのかは、疑問かと。採算性は最初から度外視? 新幹線の青森延伸に合わせてならまだしも、就航時期が早すぎる。延伸自体が当初の計画より大幅に遅れたという面はあるでしょうが…。また、その青森延伸にしてもイコール、函館延伸をも意味するわけですからね。遅かれ早かれ高速船の存在意義は薄れてしまう。。。
そうした背景を考えれば、やはり無謀な計画だったと言わざるを得ないのでは。
定期的な需要のあった青函航路に大混乱を生じさせた責任も、決して軽くはない。
6月頃には、戸田恵里香が出演するナッチャンCM(かつてのJR東海:シンデレラエクスプレスCMを彷彿させるもの)が、首都圏でも出稿されていました。ナッチャンWorld就航に合わせてでしょう、4〜5月には東北・北海道限定で流れていたものが、首都圏にも進出したわけで。今となっては、あれが最後のもがきだったとも。。。にしても、新造船を就航させ、大がかりなCM展開をして半年も経たないうちに航路廃止って…。もうそれだけで、ずさんな無計画性、方針が浮かび上がってくる。。。
*公式サイトより (2008.09.08)
高速フェリー「ナッチャンRera」「ナッチャンWorld」運休および国内フェリー事業撤退のお知らせ
謹啓 時下ますますご清祥の段、お喜び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。さて、小社は青函新時代の交通・運輸の一翼を担うべく、さらに津軽海峡エリアの活性化・広域観光振興を目指して、2隻の高速フェリーの就航に加え、函館・青森のターミナルの建替えを行い、社員一丸となって業務に邁進致して参りました。
しかしながら、全世界的な問題となっております原油価格の高騰、またそれに伴う国内漁業・運輸関係の方々に代表される悲鳴にも似た逼迫された状況、さらには車社会、観光・レジャー等への多大なる悪影響など、小社においても経営環境の激変は想像を絶する事態を迎えておりました。
こうした中、コストの軽減・効率化等さまざまな取り組みを試みて参りましたが、急激な経済環境の悪化は一企業の経営努力では到底およぶことの出来ない厳しいものであります。また、この経済情勢は早々に改善されるとは思われず、諸問題が未解決のまま推移いたしますと、お客様のみならずお取引先・関係先さらには地域に対し多大なご迷惑をお掛けする結果を招きかねないと危惧いたしておりました。
そこで、小社によるご迷惑を最小限にとどめるために、この度下記の決断をさせていただいた次第です。
まさに苦渋の選択・断腸の思いでの結論ではありますが、苦境をご斟酌・ご賢察賜りご理解いただけますようお願い申し上げます。皆様のご期待に添えない結果となりましたが、新たな局面にて恩返しをさせていただくために、一層の努力をいたす所存です。
これまで皆様より頂戴したご厚誼・ご厚情に対し衷心より厚く御礼を申し上げます。謹白
記
1. 東日本フェリー株式会社は、本年11月末日をもちまして、国内フェリー事業より撤退いたします。尚、高速フェリーは本年11月1日より運休と致します。
2. 旧来の在来フェリー事業は、小社グループ会社である道南自動車フェリー株式会社にて継承いたします。但し、<函館〜大間航路><青森〜室蘭航路>につきましては、関係各位に航路存続のご支援を依頼しており、そのご回答をもって、決定させて頂きます。以上
東日本フェリー株式会社
代表取締役社長 古閑 信二
で、実は今回の件でいちばん気がかりなのが、函館−大間航路の存続問題だったりも。
同社の会社更正法申請時はもちろん、その後も毎年のように廃止論が浮かび上がり、その度に地元自治体の支援で生き残ってきた生活航路ですからね(特例的に離島航路としての国家援助もあるらしい)。大間の(下北半島北部の)人口を考えれば、あの航路の赤字が年間2億円というのは、驚くべき数字でしょう。それだけ利用度が高く、生活に密着した航路だということ。
もちろん慈善事業ではないので、赤字は赤字ですけれどね。自治体の支援があれば、青函航路を運営する道南自動車フェリー(現:津軽海峡フェリー)が運航を引き継ぐようなので、何とか存続して欲しいところ。。。
ま、このへんは、建設中の大間原発(2012年稼働予定)問題も絡んでくるはずなので、微妙と言えば微妙なのですが…。
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