2001年より設けられた、センバツの21世紀枠。確かに初戦敗退も多いが、昨年は利府(宮城)が、2001年の宜野座(沖縄)以来のベスト4に進出。それなりの成果は見え始めたと言っていいだろう。当初から「2010年までの暫定的な出場枠」であり、つまり、今大会をもって見直すことが決まっている。
秋季大会が単なる予選と化していた過去の経緯からすれば、「センバツらしさ」を形にした成功例と言ってもいいと思う。ただし、選考方法の曖昧さには疑問を感じる面が否めないが…。選考基準は「県大会ベスト8以上(参加校数128校以上の都道府県ではベスト16以上)」のみ。21世紀枠らしい選考基準はと言えば、地域への奉仕活動など実態のよくわからないものが大半を占める。今どき、地域奉仕を無視している高校のほうが珍しいのでは? また、県大会止まりで地区大会に出場していない学校が選ばれるケースは滅多になく、事実上、地区大会で敗退した学校の救済措置的な面も大きい。
今大会にしても、東日本の大本命とされた新潟(新潟)の落ちた理由がよくわからない。推薦理由の「県内屈指の進学校で、県内最古の野球部(学校創立1892年、創部1894年)。明治時代に“野球”という日本語を作った中馬庚が校長を務めたこともある」は話題性十分。昨秋の県大会では準優勝、北信越大会では1回戦敗退ながら、県大会の準決勝では昨夏の甲子園での準優勝校・日本文理を破っている。出場していれば、台風の目になったかもしれないのだけれど。。
つまり、「なぜ選ばれたか」ではなく、「なぜ落ちたのか」に関して、明確な指針が何もない。そこが問題なのだと思う。選考というシステムである以上、どこかに必ず優劣をつけなければならない。その基準が公表されないから、曖昧な印象を強くしてしまう。
もっともその前に、東日本、中日本、西日本で3枠を分け合うという暗黙の了解ルールがいつの間にか出来上がっていること自体、おかしいと言えばおかしいのだが…。
さて今大会。21世紀枠で出場した3校、山形中央(山形)、川島(徳島)、向陽(和歌山)の初戦はと言えば。。。
- 山形中央(山形) 4-14 日大三(東京)
- 山形中央は山形大会・準優勝。準決勝で酒田南を破っている。東北大会では、準々決勝で優勝した秋田商に0-1で惜敗。
- 【推薦理由】 部の方針に「感謝心」を掲げ、冬季の土日曜を中心に施設を開放するなど地域との交流に力を入れている。
- 日大三は東京大会ベスト4。準決勝で優勝した帝京に1点差の敗退。準優勝の東海大菅生が不祥事により選抜を辞退したため、繰り上がる形で出場。
- 結果は日大三の圧勝だが、試合中盤までは互角の勝負。終盤の勝負どころで畳み掛けた日大三の攻撃力はさすが。厳しい勝負で勝機を逃さない、経験の差が明暗を分けた感も。点差ほどの実力差があったとは思えない。
- 川島(徳島) 2-3 大垣日大(岐阜) *延長10回サヨナラ
- 川島は徳島大会・準決勝で優勝した小松島に1-11で大敗。3位決定戦に勝利し進出した四国大会では、準々決勝で準優勝の高知に1点差敗退。
- 【推薦理由】 部員18人と少数なうえ、グラウンドが他部と共用でダイヤモンド程度の広さしか使えない。全力疾走を心掛け、練習場所を分割するなどの工夫を加えて、効率的なメニューに取り組んでいる。
- 大垣日大は岐阜大会、東海大会、明治神宮大会で優勝。
- 戦績から見れば大垣日大の圧勝かと思われた試合だが、予想に反して大接戦。エース・東谷の気迫あふれる投球、打者が弱気で打てないと見るや二死二塁でエンドランを仕掛ける采配など川島の積極的かつ超攻撃的な野球が、優勝候補の看板を背負ってか動きの重い大垣日大を圧倒する局面も。まったく互角の戦いで2-2のまま延長戦へ。10回裏のサヨナラ打は、詰まったライトへの飛球が強逆風に押し戻され、右翼手がグラブに当てながらも取れず。先攻後攻が逆であれば、結果はわからない。
- 向陽(和歌山) 2-1 開星(島根)
- 向陽は和歌山大会・準優勝。決勝では智弁和歌山に0-12と大敗。近畿大会では1回戦で天理に1点差敗退。
- 【推薦理由】 旧・海草中学の時代には、名投手・嶋清一などの活躍で1939~40年夏の大会を連覇した名門校。1974年春を最後に甲子園から遠ざかり、今秋の近畿大会は36年ぶりの出場。清掃活動など地域とつながりも深く、副主将は生徒会長を務めて学校生活にも熱心に取り組む。
- 開星は島根大会、中国大会で優勝。明治神宮大会では2回戦(初戦)で今治西に敗退。
- 実績から開星が有利かと思われたが、向陽のエース・藤田の緻密な投球術に、強力ながら大振りの目立つ開星打線が手こずる試合展開に。結果、1チャンスを生かした向陽が接戦を制す。開星のエース・白根は重い球質の剛球派ながら、四死球の連発から失点したように投球術が未熟。攻守ともに開星の粗さが目立ち、緻密な野球の向陽とは好対照。
- 試合後の監督インタビューで、開星の野々村監督は記者団の質疑応答に応じず。NHKの放送では「無言のまま向陽の監督インタビューを見つめていました」とのアナウンサーコメントが流されだけで、前代未聞の試合後会見に。その後、ようやく質疑応答に応じると、「21世紀枠に負けたのは末代までの恥。野球をやめたい。腹を切りたい」との暴言を放ち、報道が過熱。学校側に抗議が殺到したこともあり、数日後に監督は辞任。
21世紀枠の暫定期間が終わる年になって、開星・野々村監督から21世紀枠自体を否定するかのような発言が出るとは…。
後に「それは真意ではない」旨の謝罪もあったが、精度の根幹を揺るがす発言であることに変わりはないと思う。そもそも、「21世紀枠なんて意味ねーだろ」とでも思っていなければ、あそこまでの発言は出ないはず。
あながち間違いとも言い切れないし、開星からすれば胃が痛くなるような試合展開を考えれば、わからないでもない発言ではある。ただ、指導者としては、それを言ってはいけない。甲子園出場校の監督として、試合後のインタビューまでが仕事の一環であるという認識も足りない。稚拙で粗い開星の戦いぶりを象徴するかのような監督の姿勢に、正直、苦笑してしまった。また、マウンド上のエース・白根の態度も同様で、いただけない。朝青龍がマウンドに立っているのかと思った。。。
高校野球ファンであれば、無名の公立校・府中東が激戦区の広島を勝ち抜き、甲子園に出場(79年:選抜)したことを覚えていると思う。あのときの監督が野々村氏。その後は開星の前身・松江第一の監督に就任し、中国地区では名将、名物監督と呼ばれていたらしい。
と言っても、全国区では無名の存在。開星が島根でいくら強かろうが、中国大会で優勝しようが、やはり全国区レベルでは無名校。甲子園出場回数は春2回、夏6回。いっぽうの向陽=海草中は、春14回、夏7回(優勝2回)の甲子園出場を誇る古豪名門校。それを侮辱するような発言が的外れなことは、火を見るより明らか。逆に和歌山県勢から、「春夏を通じて優勝もなければ、勝利数も全都道府県で下から数えたほうが早い島根の代表が何を寝ぼけたことを言っているんだ」と見下されてもおかしくない。そうした奢りと実体とのギャップが、チーム構成、試合展開、敗戦、問題発言などの全てに反映されていたように思えてならない。
別に島根県に恨みがあるわけではないので、今回の件を引き合いに島根をどうこう言うつもりはない。ただ、その島根にしても、21世紀枠の候補校(出雲商)を推薦していることをお忘れなく。件の発言はそのまま、出雲商に対しても当てはまるのだから。
「愚かな行為によって学校だけでなく、島根県にもマイナスイメージとなった。大好きな故郷の島根が、私の言動のために悪く言われていることに一番心を痛めている。冷静になって考えたが、謝罪の意味を込めて監督業から引きたい」
辞任の理由をこう語ったそうだが、大好きだという島根に対しても、自ら暴言を発したことを認識するべきだと思う。死者に鞭打たない日本流の風習からすれば、極論かもしれないけれど。
今回の件に関しては、島根県高野連の姿勢にも責任の一端があるのでは。立正大学淞南、江の川、益田東といった「ベンチ入りメンバーに県内出身者は皆無」な野球留学校を黙認し、弱小な県勢の成績を上げるためなら何をやってもいいと考えるのは勝手だが、それならそれで21世紀枠に推薦などしないで欲しい。偽善そのものじゃないか。騒動の最中、県高野連が何の公式見解も発していないのはなぜなのか。
野球留学校と言えば、開星にしても同様のイメージがあるかもしれない。1998年には住民票をごまかして試合に出場していた関西からの留学生が問題となり、出場停止処分を受けていることからも。が、近年はそうした傾向が薄れ、今回のチームもベンチ入り18人中16人は県内出身者。「島根の野球を見せたい」と語っていた野々村監督の言葉は、嘘じゃない。野球留学が問題化した2007年には、「ゆくゆくは島根県の生徒だけでチームを作りたい。野球部寮も廃止の方向性」ともコメントしている。氏が島根の野球を愛していたという事実は、きちんと受け止めるべきだろう。
ちなみに、開星に対するバッシングには、試合当日に同校教師が校内の女子トイレに盗撮目的で侵入し、カメラを仕掛けた罪で逮捕された件も絡んでいると思われる。タイミングが悪いと言うか、良すぎると言うか…。
現在、同校の公式サイトは閉鎖中。以下の文面のみがアップされている。
お詫び
この度の本校職員による問題が、皆様に多大なご迷惑をおかけしております。大変申し訳なく、深くお詫び申し上げます。
当該職員につきましては、関係各所のご指導の下、できうる限り早期に対処する方向で厳正に処分をしてまいりたいと考えております。
また、学校内外の専門家とも協議しながら適切な事後措置を検討中です。
皆様への迅速な情報提供と、今後の再発防止に職員一同、誠心誠意尽力してまいる所存です。
本ホームページにおきましても、復旧次第その後の対処につきましてご報告させていただきますので、改めましてご理解ご協力のほどお願いいたします。平成22年3月25日
開星中学校・高等学校
校 長 大多和 聡宏サイト停止について
平素は本学のウェブサイトをご利用頂き、厚く御礼申し上げます。
この度、本学サイトへのアクセスが集中し、システム内にて不具合が起こりサイトへのアクセスが現在できない状態になっております。
現在、サイトの復旧作業を行っておりますので、ご迷惑をおかけいたしますが何卒ご了承下さい。
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