旅にっき 【2003.09.20-27/福山〜久留米〜宮崎】

 2003.09.25

この日の行程  大分、熊本県境付近の山間部を走り回り、小国では温泉を巡り、久住高原を竹田へと抜ける。

 津江→小国

 朝の山間部を走るのは心地よい。でも雨が…(T_T) 天気予報では晴れのはずなのに。
 宿の方によると「津江は雨が多いから」だそうで、確かに、津江エリアを出る頃には雨も止みました。
 山深い村だけに、天候不順は当たり前なのでしょう。

 

 ちなみに、中津江村、上津江村の人たちは、周辺一帯を総じて“津江”という名称で呼びます。行政上は上津江村中津江村に分かれていても、実際の文化圏は“津江”で一括されているんですね。

上津江村HPより引用

●「津江」という名の由来
 かつて神武天皇の代、南国の嶺より訪れた老翁が松の杖で七回四方を指し、その地を現したという説話より「津江」の名をいただく地、上津江。この地は、ブナやモミなどの豊かな木々に覆われた山々と、筑後川の源をなす清流の地として、古くからの自然が息づく美しい里です。

 さて、この日の第一目標は、現金調達(苦笑)。前日に現金を下ろせなかったため、宿泊費を支払った残額は数百円(^^;; 昨日シャッターが閉まっていた大分銀行中津江出張所も、今日は開いている!(そりゃ、9時過ぎですから) そこで気づいたのですが、なんと、ATMは店舗内に設置されていた!! てことは、ATMも閉店時間の15時までしか使えないと。納得したけれど、意味のない気がしないでもない。。。。

 これで気分も落ち着き、同じく栃原地区にある津江温泉にて、入浴♪ このエリア唯一の温泉は全国でも数少ない硫酸塩泉で、無色透明なお湯に浸かった瞬間から、独特な“ぬるっ”と感を体感することができます。同時に「いいお湯だなぁ」という実感も(^o^) 施設自体は老人福祉センターを兼用した古いもので、露天風呂など洒落たモノはないけれど、かなーりお気に入りの湯になりましたね。湯上がりには昔懐かしい雰囲気が漂う休憩室で、畳にゴロン。幸せ。

 

 名残惜しいけれど、そろそろ“津江”を後にしなければ。
 でも、その前に最後の寄り道。上津江村の外れ、熊本県阿蘇町、旭志村と接するエリアに、九州唯一の国際公認サーキット・オートポリスがあるもので。って、津江温泉でエリアマップを見るまで気づかなかったんですけれどね。せっかくここまで来たのなら、見てみたいじゃないですか。
オートポリス 1993年のF1アジアGP開催が消滅して以来、国内モータースポーツ界でも忘れられた存在になっていたサーキット。が、管理運営元でもある上津江村の努力により、今年から全日本GT選手権を始めビッグレースが開催されるようになったらしい。

 上津江村を縦断する、国道387号線を南下。村内最後の集落までは整備されていた路面も、その後はローカル国道(山道)へと変貌する。フルスロットルでも40キロ出ない急勾配&連続ヘアピンを登り切ると、そこには阿蘇の展望も開ける、広大な高原地帯が待ち受けていました。
 そして、そのど真ん中にお目当てのオートポリスが。素晴らしいロケーション! 中には入れないのでゲート周辺を見ただけですが、とにかく広い! 鈴鹿サーキット富士スピードウェイが、単なる遊園地に思えてしまうほど。機会があれば、ここでビッグレースを観戦したいですね〜。

 
【↑ (右)左写真の正面ゲートを背にすると、広大な駐車場と雄大な景色が広がっている】

 さぁいよいよ、“津江”とのお別れ。
 と…。あれ? エンジンがかからないぞ…。今朝から何度か“パンッ”という不完全燃焼のような音がしていたけれど…。よりによってこんな人里離れた、携帯(ドコモ)も圏外なところで…。何度か試すうちに無事にかかり、ホッとしたけれど…(不安)。
 来た道を戻り、中津江村・栃原から国道387号線を快走して熊本県・小国町の中心、宮原を目指す。エンジン不調が気になるけれど、どうしようもない。小国まで行けばバイク屋の一件ぐらいあるだろうし、何かあればそこで大休止…には、なりたくないな。
 途中、郵便局がありそうな勘がして黒淵という集落に寄り道してみると、いい感じの簡易局がありました。で、その横の路地には“鍋ヶ滝”という案内表示が。かなり気になったものの、エンジン不調と時間の関係もあって先を急ぐことに。

 

 小国町宮原まで来ると、“津江”ではほとんど見かけなかった県外ナンバーのクルマが目立つように。立ち寄った道の駅・小国ゆうステーションも観光客でいっぱいで、なるほど、黒川温泉など有名温泉地を控えているだけのことはありますね。でも、著名な観光地にありがちなあのザワザワした雰囲気は、どうも好きになれない。。

 と、ここでもらったパンフレットに、先ほどの“鍋ヶ滝”の写真&解説が。
高さ9メートル、幅20メートルの鍋ヶ滝。滝の裏を通り抜け、対岸へ行けます。

 ぐぁ。寄れば良かった…(T_T)

 ちなみに、この道の駅・小国ゆうステーションは、かつてのJR宮原線の終点・肥後小国駅の跡地を整備したもの。片隅にはその名残の駅名票や転轍機、短い鉄路が保存され、館内では宮原線の資料・写真なども閲覧できる。

 

宮原線 久大本線の恵良と肥後小国とを結んでいた、いわゆる行き止まりの盲腸ローカル線。昭和29年に全通。木材輸送を目的に建設された路線で、山中の盆地である小国(宮原)と他エリアをつなぐ交通路でもあったが、その小国は熊本県。起点の恵良(実際の列車発着は豊後森)は大分県で、接続する久大本線に乗り換えても大分か福岡県久留米にしか出られないという問題もあり、モータリゼーションの発達とともに昭和59年に廃止となった。

 ローカル線らしい味わいで旅鉄派に人気のあった宮原線ですが、その遺構が現在も数多く残ることから、昨今の廃線跡ブームでも脚光を浴びているそう。小国(宮原)からほど近い山川温泉の周辺にも、アーチ橋が2箇所、かつてのままの姿で残っていました。当時の駅間で言うなら、北里−麻生釣間ですね。見かけはコンクリート橋でも、戦後の物資不足な時代に建造されたため、実体は鉄筋コンクリートならぬ“竹筋”コンクリートだったとか…。

 

 道の駅・小国ゆうステーションでもらった小国ツーリズム新聞『Syuna』によると、大半が未整備のままだった旧・宮原線の線路跡地を、有効活用する動きがあるようですね。《旧国鉄宮原線の跡地活用を考えるワークショップ》の手で、まずは肥後小国−北里間の約4キロを遊歩道化する計画なのだとか。


【↑ 大判なので1面の一部だけスキャン。(発行:小国ツーリズム協会)】


 小国  山川温泉、岳の湯温泉、はげの湯温泉など温泉巡り

 在りし日の宮原線に思いを巡らしながら、ここからは温泉巡り。
 まずは、滝のすぐ横に絶景の露天風呂があることで知られる、山川温泉・旅館山林閣へ。小国方面へ行くなら絶対に寄ろうと思っていた温泉なので、張り切って浴場へと向かうと…。露天風呂は男女時間入れ替え制で、お目当ての“滝の湯”は13時〜19時が女性専用。現在、13時10分(T_T) ちゃんと下調べして来ないからだと、後悔しても後の祭り。仕方なくもう一つの露天風呂、この時間帯は男性用になっている“巨岩の湯”に浸かる。こちらも渓流沿いで、それなりによくできた露天風呂ではあるものの…。小一時間ほど滞在し、入浴客は自分だけ。♂客の皆さんは、既に帰った後なのでしょう。

 
 
 

 ちなみにこの宿、露天風呂は(たぶん)素晴らしいものの、館内の作りや風情は今ひとつ。言うなら、田舎のフツーの宿ですね。山奥の一軒宿のような味わいがあるわけでもなく、かと言って日本旅館の風情を感じさせるわけでもなく。宿泊料金12,000円〜(2名以上)ということは、1人なら泊まれたとしても15,000円はするでしょう。ちと高いなぁ。それでも、小国〜九重エリアの温泉では安いほうなのですが…。黒川温泉の超人気で観光客が押し寄せているエリアだけに、宿の相場が分不相応に高騰している印象も。

 その帰路。国道387号線から山川温泉へと道が分岐してすぐのところでは、“ほたるの里温泉”という温泉も発見。どのガイドブックにも載っていない、地元の人向けの温泉らしい。中に入ってみると無人で、営業は夕方から? また後で寄ってみることにして、近くの奴留湯(ぬるゆ)温泉へと向かう。かつて宮原線・北里駅があった北里集落に、何の変哲もない共同浴場があるはずなので…。

 

 ふぅ。。気を取り直し、貸し切り温泉が楽しめると評判の、岳の湯温泉へ。
 山奥の小さな集落のあちこちから噴気が出ている光景は、ちょっとした“地獄”スポットのよう。生活に温泉が密着している雰囲気も。その噴気に包まれた高台にあるのが岳の湯共同浴場(露天風呂)で、すぐ下の白地商店でお金を払うと1時間貸し切りになるシステム。「そろそろ時間だから」と言われて上がっていくと、ちょうど前の組の人が出てきました。広くて丸い露天風呂で、のーんびりと時を過ごす。

 
 

 続けて。小山を一つ越えると走行3分で到着の、はげの湯温泉へ。くぬぎの湯という貸し切り露天風呂が人気の温泉ですが、ひなびた感が漂う岳の湯温泉とは違い、こちらは何やら観光地っぽい雰囲気。
 長屋のような和風の建物に入っていくと小さな部屋が15室ほど並んでいて、それぞれドアを開けると脱衣場、その先にこじんまりとした露天風呂があるという構造。なかなか良くできてますね。コインを入れるとお湯が一定時間、注がれる仕組みで、利用するたびにお湯を入れ替えるという趣向も斬新で。でも、何から何まで人工的すぎて、感慨はないなぁ。。ローカルで手作り感あふれる岳の湯のほうが、好きかも。1時間1,200円の料金も、かなり割高に感じるし(一人だしねぇ)。
 泉質は岳の湯温泉と同様、無色透明無味のサラッとした単純泉。おそらく源泉は同じ?
 小一時間ほど湯に浸かり、すっかりのぼせ気分で出てくると、受付の女のコが温泉玉子を2つサービスしてくれました。「お一人のご利用でしたので…」と。ありがたくいただきます。一人で来る客など滅多にいないでしょうし、1,200円では申し訳ないと思われたのかもしれません(^^;;

 
【↑ 受付を済ませ、階段を下りていくと…】

 
【↑ (左)こんな長屋風の建物が連なっていて… (右)中は純和風な感じ】

 
【↑ (左)家族風呂風な露天風呂。3人も入ればいっぱい。 (右)“蒸し地獄体験コーナー”なるモノも(^^;;】

 そろそろ夕暮れどき。先ほどの“ホタルの里温泉”へ行ってみよう。
 と、今度は外にクルマが何台か止まっていて、中から人の気配がする。どうやら受付は無人で、お金を箱に入れて勝手に入浴するシステムらしい。なーんだ、さっきも営業していたんだ。電気が消えていて暗かったから、よくわからなかったのね。
 ちょっと脱衣場をのぞいてみると、広いとは思えない浴場に5〜6人は入っている様子。おそらく顔見知りの地元の人ばかりだろうし、これはちょっと入りづらい。湯当たりでボーッとしてきているし、夕闇も迫っているので、ここはパスして先を急ごう。



 すっかり暗闇となった国道442号を、黒川温泉方面へと快走する。田の原温泉、黒川温泉、満願寺温泉…。次から次へと現れる温泉表示に、心は揺れまくり(苦笑)。泊まりたいけれど、一人での宿泊、それも当日のこの時間では断られる可能性が高い。そもそも一人では、ン万円の宿泊費を請求されそうで…。
 明日の予定を考えると、今日は竹田まで行っておきたい。竹田にはビジネスホテルもある。

 と、自分に言い聞かせたつもりだったのに、誘惑に負けてUターン(^^;; ひばにた風情の満願寺温泉なら宿泊費も高くないだろうし、観光客も少ないはず。飛び込みの一人客でも泊まれるかも…。既に宿の夕食時間帯だし、どうかなぁと思いつつ夜道を飛ばしていく。

「ごめんなさいねぇ、今日はお休みなんですよ」

 静泉荘のおばぁちゃんが、申し訳なさそうに。予約が一件もなければ、お休みにしちゃうよね(T_T) 川沿いの共同浴場では、地元の子供たちがはしゃいでいました。もちろん、観光客の姿など見当たらず。。。


 小国→竹田

 これで吹っ切れて、一気に竹田を目指す。
 黒川温泉を経て(通過して)、距離にして40〜50キロほど? 熊本・大分県境も越えて爆走すると、久住高原に差しかかる頃には行き交うクルマも皆無となる。昼間は素晴らしい景観のドライブコースも、今は無人&暗闇の直線が続くのみ。時刻は19時過ぎなのに、まるで深夜のよう。標高が高いせいか半袖では寒く、心も体も心細くなってきたところで…おそらく10分か15分ぶりに1台のクルマに追いつき、テールランプを頼りに走っていきました。あの赤色の灯りは、有り難かったなぁ…。
 高原地帯を抜けて久住町に入ると、空気が急に暖かくなるのを感じて嬉しい。この気温差を体感できるのも、バイクの旅ならではでしょう。寒いほうの体感は、あまり感じたくないけれど。。。
 20時半頃、ようやく竹田に到着。駅近くの割烹&ビジネスホテル、御宿割烹 一竹にイン。

 
【↑ シングル5,670円。2食付き8,400円は到着時刻が遅かったので不可。朝食(630円)のみ追加】

 

 一服して人心地ついたら、すぐ正面の温泉施設:竹田温泉花水月へ。夕食もここのレストランで済ませ、温泉で疲れを癒す。
 広大な浴槽に掛け流しの湯があふれる浴場は、冷えた身体でなくとも有り難く、素晴らしい。露天風呂も立派で、ほとんど貸し切り状態なのが申し訳ないほど(20時を過ぎると利用客がほとんどいなくなるそう)。第3セクター方式ながら営業努力もかなり見受けられるので、近隣を訪れた際はぜひ利用してあげましょう(^^;; 22時まで営業というのも、旅人には有り難いですね。

 
【↑ (左)建物前の花水月前バス停には、大分−熊本間の特急バスも停車する (右)レストランでの夕食(竹田名物の鶏肉)】

 
【↑ こんな立派な温泉が街中にあり、500円という低料金で利用できるのだから、地元の人が羨ましい】