旅にっき 【2003.09.20-27/福山〜久留米〜宮崎】

 2003.09.24

この日の行程 久留米から南下し、温泉に立ち寄りつつ熊本・大分県境付近から山越えして、ワールドカップで話題になった中津江村へ。

 久留米→津江

 久留米から、熊本方面を目指して出発。
 と言ってもアテがあるわけでもなく、行き当たりばったりで「今日はどこまで行けるかな?」というスタンス。く
 途中で少し道に迷いながら、地方道82号線で広川町を抜けて八女市に出る。見かけた郵便局を素通りできないもので、久留米市近郊を抜けるのにけっこう時間を費やしてしまう。何も下調べをしていないから、郵便局の位置なんかまるで把握していないのに…次から次へと〒マークが現れる(^^;;
 立花町で国道3号に合流すると、すぐに福岡・熊本の県境、小栗峠越えにさしかかる。大型トラックが多いものの日中なので交通量は少なく、快調に飛ばせる。めでたく熊本県入りしたところで道ばたの看板に《温泉》の二文字を見つけてしまい、思わず寄り道。。。
 立ち寄った先は鹿北町幸の国・健康温泉館ゆ〜かむ。お湯は単純温泉で無色透明、あまり印象に残るものではなかったけれど、昼下がりの露天風呂はやっぱ気持ちいい。鹿北産アヤ杉をふんだんに使った館内は明るく開放感に満ちていて、なかなかいい施設です。水着着用のバーデゾーンもあるようで、半日のんびり過ごすにはいい感じ。

 
【↑ 周囲にはのどかな田園風景が広がっている】

 

 寄り道ついでに、案内表示にある宅間渓谷へ行ってみようか…。行き当たりばったりの旅らしいところです。
 そのまま地方道18号を走ると、途中から山道になってくる。渓谷自体は小規模なものでしたが、気分良く走れるルートで快適♪

 

 当初はこのあたりから菊鹿町、山鹿市に抜け、菊池&山鹿温泉にでも立ち寄り…と考えていたのだけれど、いくら走っても山を下りていく気配がない。と言うよりむしろ、どんどん標高が上がっていく感覚? 見渡す限り雄大な山地が広がる光景に、おかしいなぁと思いつつ走り続けると(←戻れよ)、何やら峠らしきところに到達。駐車&休憩スペースもあり、何やら石碑が建っている。“広域基幹林道・八方ヶ岳西線全通記念”とか何とか…政治家の名前まで彫ってあるし。
 うーん、見事に道を間違えたらしい。地図を見ても現在位置がよくわからず、目の前にはトンネルが口を開けている。同じ道を延々と戻るのもシャクだし、えーい、行っちまえ(苦笑)。

 

 トンネルを抜けると、一気に下りワィンディングロード。全開で車体を倒し込みながらコーナーを攻めていく…って、リードでこんなことするか、ふつー(笑)? 左側はサイドスタンドのせいでバンク角が浅く、しょっちゅう路面に擦る擦る。だから、リードでバンク角を気にするかっての(^^;; 対向車? あるわけないじゃないですか。それどころか、この前クルマが通ったのは何日前? といった路面なので。
 そんなこんなで突き当たったのが、地方道9号。ようやく現在地が把握できた。分岐点は山の中で、集落や人家などもう1時間以上見ていない。“右:菊鹿、左:中津江”の表示にしばらく悩んだ末、左を選択。やっぱ“中津江”の三文字を見てしまうと、そっちへ行きたくなるものです。
 その後も山中を走り抜けると、すぐに熊本・大分県境へ。ようやくたどり着いたぞ、中津江村

 

 まずは、村内唯一の観光地:鯛生金山へ。昔の坑道を周遊ルートとして整備した、観光客向けの廃鉱山ですね。案内説明が聞けるトランシーバーを借りて入坑するというギミックが、何となくそれっぽい(笑)。坑内は当時の施設に人形が加えられ、採掘光景を再現して見せるという全国各地の観光鉱山にありがちなパターン。坑道の規模が比較的大きいこともあり、それなりに楽しめましたよ。とは言え、このテの施設でいちばんだと思われる、秋田県のマインランド尾去沢には敵いませんが。
 ちなみに、内部の坑道は県境を越え、福岡県側にも通じているそう。興味津々ではあるものの、残念ながら未整備のため立ち入り禁止。

 
 

 鯛生金山付近から国道442号に入り、役場のある中心部へと走る途中で分岐すると…。標高がぐんぐん上がっていく山道を登った先に、ありました。2002ワールドカップの際に話題を集めた、カメルーンのキャンプ地:鯛生スポーツセンターが。あれこそ、“中津江村”の名を全国に知らしめた大イベントでしたからね。あのキャンプがなければ、おそらくこの旅で中津江村を訪れることはなかったでしょう。
 ま、実際に行ってみれば何の変哲もないスポーツ研修施設で、小さなグラウンドが一つあるだけなんですけれどね。でも、何の物音もしない山の上で、他に人工的な建造物がいっさい目に入らない雄大な景色を眺めていると、カメルーン・チームがここをキャンプ地に選んだ理由も何となくわかったりするわけで。

 

 そんな中津江村はとにかく広大で、その大半が山、また山。鯛生川沿いのわずかな谷間(平地)を国道が走り、そこに集落が点在しているというロケーション。集落と言っても家が数軒あるだけで、集落と集落の間隔は確実に数キロ以上…。国道442号線以外には道らしい道もなく。よくもまぁ、こんなところ(失礼ですが)に海外のナショナルチームが来たものだと、素直に感動しました(^^;; サッカーに集中できる環境は揃っているでしょうが。。。

 

中津江村HPより引用

「山懐に抱かれる」と言いますが、中津江村の懐は、それはそれは深いのです。きれいな水と美味しい空気、豊かな緑に囲まれているから人間も朗らかになってくる。小さな村ですから、地域のつながりも強い人情の村ですね。さて、見所はと言いますと、心の安まるところ、ダイナミックな自然に遊ぶところと様々ですが、正直に申し上げますと「静かで、心を煩わせるものが何もない」それが一番の魅力なのかもしれません。

 ひたすら山間の閑村…という光景が変わるのは、村内唯一の信号があり、銀行やガソリンスタンド、郵便局、バスターミナルなども集まる中心部・栃原地区の数百メートルのみ。ここのスタンドで給油したレギュラーは、なんとリッター120円!(高っ) 現金を下ろそうと立ち寄った大分銀行中津江出張所は、17時前なのにシャッターが閉まっている。。。ATMもない(T_T) 生活環境が都市部とは違うことを、痛感させられました。
 そうこうしているうちに日も暮れて、周囲はアッという間に真っ暗闇。山の夜は早いのです。鯛生金山で購入した日田市郡のガイドブック《旅さき本》に載っていた民宿を目指し、全開で山中を走る走る(こんなのばっか)。ようやくたどり着いた民宿やすらぎの里の明かりを見たときには、正直、生き返る思がしましたね。周辺数キロに、他の人家は一軒もないんだもの。


【↑ この《旅さき本》はかなり便利。観光情報が少ないこのエリアを旅するにはオススメです。(日田時報紙器印刷・刊)】

 このやすらぎの里は隣村の上津江村による村営(委託)民宿で、気づけば村境を越えていたんですね。実質的な運営管理は近隣の方が行なっているそう。その近隣の皆さんが、まさに帰宅(閉店)前のお茶をされている最中に、飛び込みで宿泊を頼んだわけで。。。あと30分遅ければ、無人になっていたかも…。時間が遅いので夕食は兼営している食堂の定食しか用意できないとのことでしたが、食卓には自家製の梅干しもサービスされ、おいしくいただきました。
 ちなみに、この日の宿泊者は1人。つまり自分だけ。宿泊予定がなかったため宿直者もいないそうで、夜間は館内に誰もいない無人状態。何かあった際の電話番号を教えられ、静かな夜を過ごしました。



私はここで江戸川乱歩委全集を読破してしまった。
静かに読書ができる宿、「上津江村やすらぎの里」
(宿のパンフレットより)