甲子園(第87回全国高校野球選手権大会)の開会式で、いわゆる“野球留学”に対し、中山文部科学相が祝辞の一部で「全国から選手を集める風潮がある。選手は生まれ育った土地の高校に入り、地元の人が応援できるのが本当の姿」と批判したそうな。開会式は半分寝ながら見ていた上、祝辞の部分はかなり爆睡していたのでよく覚えていないんですが(苦笑)。
いわば、高野連への問題提起でしょうね。いっぽう、その高野連のほうは、今年6月から《野球留学検討委員会》なるものを発足させ、全国的な実態調査を始めたそう。しかし、今さら“実態調査”ってねぇ。
しかも、高野連の定義する野球留学生が、“保護者が同居する自宅からの通学者以外の者”だというのは、どうなんでしょうね。同じ都道府県内に自宅があっても、学校の立地によっては寮生活をするケースも多々あるわけで。少なくとも、上記の定義に“他都道府県からの通学”などという条件も必要では? 例えば北海道のように通学エリアが広大な場合、強豪校ならほとんど全員が“留学生”になってしまう。再考を望みたいですねぇ。
で、今大会の出場校、登録18選手の状況を、出身中学の都道府県別にまとめてみると…。
なるほどねぇ…大臣から釘を刺されるわけだ(苦笑)。
もっとも、私立校の場合には、一般的に隣接する他都道府県から通学するケースも多いですからね。県外中学出身だからと言って、一概に野球留学とは言えないはず。自分の母校も東京の私立校で、生徒の4割近くは埼玉・千葉・神奈川からの通学生でしたからねー。ちなみに、野球部は初戦敗退が当たり前の弱さ(苦笑)。
また、隣接、あるいは近県の強豪校ならば、「あの学校の野球部で甲子園を目指したい」とか、「あの監督に指導を受けたい」などという例も多いかと。ベンチ入り18人のうち、数人が県外出身者であっても、そうそう目くじら立てることもないと思いますね。
ちょっと驚いたのは、遊学館に県内出身者が増えていたこと。留学生を集めて甲子園で結果を出し、それが地元の強化や活性化につながってきているのなら、ある意味、ひとつの成功例と言っていいのかも。
でもねぇ、今大会で言うなら、青森山田や酒田南、日本航空、江の川の各校は、どうかと思いますよねぇ。
江の川は昔から(谷繁がいた頃から)こーゆー学校なので今さら驚かないですけれどね。甲子園の常連校とも言えないし、出場して好成績を残すわけでもなく(苦笑)。
いっぽう、近年、甲子園の常連校となり成績も上げつつある日本航空も「どこの代表?」と言いたくなるほど選手が各地から集まっているものの、隣県が多いのでまだ…ね。
しかし、青森山田、酒田南はねぇ…。東北方面は近年、こうしたチーム作りが主流となってきているようで、ちょっとヤな感じ。それでいて、優勝旗は白河の関どころか、一気に津軽海峡を越えちゃいましたが。その東北では、長年の優勝候補筆頭だった宮城代表・東北も、今年のチームは県外出身者が多いですねぇ。例年なら半分以上が県内出身者なのだけれど、今年はたまたま?
で、試しに山形出身の知人に尋ねてみたところ、「それでもいちおう地元代表なので、応援はする」のだそう。山形県の場合、昔からそうした学校しか代表にならないので、それが当たり前の感覚なのだとも。確かに、かつての常連校の東海大山形も、選手の大半は留学生でしたからねー。ライバルの日大山形のほうは例年、半分程度が県内出身者だった記憶があるけれど。
今大会、酒田南が勝った試合後の監督インタビューで、NHKの記者が「山形県勢として…」「山形のレベルが上がって…」などと盛んに言っていたけれど、その監督も含めて実際には“関西勢”、なんじゃないの? 監督も答えにくそうだったし、何か違和感ありあり。実態を知っていながらそーゆーインタビューに持ち込む記者もどうかと思いますが。
対戦して敗れた姫路工が、地元出身者ばかりでノーシードから厳しい兵庫県予選を勝ち上がってきたのとは好対照。今春センバツでベスト4に進出した羽黒にしても同様で、全47都道府県の中で唯一、夏の大会でベスト8に進出したことがないという汚名返上のためには、県高野連も形振り構わずなんですかね。
例えば島根なら、フツーの県立校である浜田が常連校として定着し、成績を残している。大分の野球留学校として有名な(苦笑)柳ヶ浦も、圧倒的な優勝候補と言われながら予選敗退。全国各地ではそういったバランスが見られるのに、山形と(近年の)青森だけはその例が顕著すぎて目立つんですよねー。留学校しか代表にならないんだもの。
まぁ、だったら天理はどーなるんだ、とも言えるけれど、あそこも昔からですよね。天理教の信者が全国から集まる…という大前提のある学校なので(苦笑)。
そう言えば、そうした野球留学を全国に広めた代表例である明徳義塾が出場辞退となったのは、何かの因縁なんですかねぇ(苦笑)。日本航空が該当選手の出場停止処分だけで済んだように、隠蔽工作をせずに不祥事をすぐ報告していれば、ここまで事態が大きくはならなかっただろーに。
関係各方面への迷惑にも、多大なものがありますからね。繰り上げ出場となった高知はもちろん、対戦校である日大三の選手も可哀想だよなぁ。ただでさえ判官贔屓、東京代表が“敵”扱いされる甲子園で(苦笑)、球場全体を敵に回しているかのような雰囲気での試合だったんじゃないかと。
とりあえず、明徳義塾に関しては今後どうなっていくのか、気になるところではありますね。かつて、甲子園でちょっとした旋風を起こすとともに野球留学で話題となった倉吉北(鳥取)が、不祥事を連発したあげくにすっかり甲子園から遠ざかった…そんな前例もあるだけに。
*追記
8月17日に開かれた高野連の審議委員会で、明徳義塾の秋季高知大会への出場を差し止める応急措置が決定したそう。“応急”とはこの場合、“取り急ぎ”の意味なんでそか。だとすれば、追加処分もあり得る?
これで、来年のセンバツへの道も自動的に断たれたことになりますね。
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