富山県富山市の猪谷駅(JR高山本線)と岐阜県飛騨市の奥飛騨温泉口駅(旧・神岡駅)とを結ぶ第3セクター:神岡鉄道(旧・国鉄神岡線)が、2006年末を目途に廃止されることに。6月29日の同社取締会で決定事項とされたそう。
第3セクターとしては全国で二番目に転換開業した同路線ですが、やはり…という感は否めませんね。岐阜県の山深いエリアへの盲腸線(行き止まり線)で、しかも起点の猪谷は富山県。簡単に例えるなら、県庁所在地へ行くのに他県を経由しなければならないという、ある意味、いびつな線形だと。路線立地だけで見るなら、飛び地のようなものですね。それだけでも経済流通の根幹を外しているわけで、このような鉄道敷設例はかつて全国に点在したものの、現存する路線はほとんどナシ。
そもそも、鉄道敷設法(1892年=明治25年公布)での掲示からして、“富山県猪谷ヨリ岐阜県船津ニ至ル鉄道”ですからね。他の多くの廃止路線のように、計画(あるいは建設)途中で全通を断念させられた路線ではなく、当初から盲腸線として計画された路線なのですから…。
要は、沿線の神岡鉱山から産出される亜鉛鉱石を富山港へ輸送するために敷設された鉄道、なんですね。国鉄赤字路線として廃止された際も、同鉱山からの硫酸輸送需要があるからこそ第3セクター化された路線であると。硫酸を道路輸送するのは危険なため、鉄道が残されたと。
が、その硫酸輸送も、貨車の老朽化のため2004年10月からトラック輸送に切り替えられ、そうなると鉄道の存続理由がなくなる…のは当然の成り行きだったのでしょう。。
旅客に関してはもともと需要が少ない上、沿線から富山県へ越境する需要がどれだけあるのかも疑問ですからね。沿線からは県内の高山本線・飛騨古川方面にバスが通じていることですし…。大きな反対もなく、静かな路線廃止へ…そんな雰囲気のようですね。。。
ただ、硫酸輸送を一般国道でのトラック輸送に切り替えて安全性が確保できるのか、という問題は…うやむやに?
*追記
神岡鉄道の公式サイトに、廃線についての告知がアップされた。
平成17年6月30日
各 位
神岡鉄道株式会社神岡鉄道の廃線について
平成17年6月29日付開催の弊社第115回取締役会におきまして、『平成18年12月末までを目途に廃線することとして、その準備と手続を行う。ただし、飛騨市を中心として存続の可能性を検討することは妨げない。』旨、8月中旬開催予定の臨時株主総会にて提案することが決議されました。つきましては、今後各段階を踏みながら廃線の準備に入って参りますことをここにご通知いたします。
神岡鉄道は、昭和41年10月に旧国鉄神岡線として開業し、昭和59年10月には、地域住民の公共輸送機関、国道41号線閉鎖時の代替輸送ルートの確保、神岡鉱業株式会社の濃硫酸輸送を目的に第三セクター方式の地方鉄道とし運輸営業を開始致しました。以来、沿線の皆さまの交通手段及び、貨物輸送の手段として地域の発展に貢献して参りました。
しかし、モータリゼーションの進展などに加え、少子高齢化等の影響により、輸送人員は著しく減少し、ピーク時に比して約25%に減少しています。また、平成17年3月末にて、唯一の荷主である三井金属鉱業株式会社が貨物及び濃硫酸の輸送を鉄道からトラック、タンクローリー輸送に切替えたことにより、鉄道部門の売上の約7〜8割を占める貨物輸送を廃止致しました。
当社では、これまでワンマン運転や駅の無人化といったコスト削減策とともに、各種イベント列車の企画などの需要喚起策を実施して参りましたが、輸送人員の減少傾向には歯止めがかかっておりません。また、鉄道事業収支につきましても一貫して赤字状態が続いており、赤字幅は今後さらに拡大傾向にあります。
したがって、株主である岐阜県、富山県、飛騨市、高山市、富山市、三井金属鉱業株式会社にて、今後の神岡鉄道経営について検討を重ねて参りました結果、 平成18年末を目途として、 鉄道事業から撤退せざるを得ないと判断するに至りました。
地域の皆様を始めとして、これまで神岡鉄道をご愛顧頂きました皆様には、大変残念ではございますが、ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上
同サイトは、廃線が決まったにもかかわらず、最後までしっかり鉄道としての使命を果たそう…という気持ちが見て取れて、好感が持てますね。会社自体がそうなのか、WEB担当者が神岡鉄道を愛しているからなのかはわかりませんが。。。
また、昨年の台風23号による被害で不通になったままのJR高山本線(飛騨古川−猪谷)の開通(平成19年秋予定)を待たずに廃線、ということになるんですね。富山側からしか(列車では)到達できない状況下、なるべく早いうちに乗車の機会を持ちたいものです。
*追記
予定廃止日は、2006年12月1日に決定。
コメント