旅にっき 【2003.11.09-10/福岡(関門海峡)】

 2003.11.10

この日の行程

 小倉→東京  関門海峡を…歩く?

 この日は、近年整備が続く関門海峡エリアを観光してみることに。
 関門海峡は鉄道で何度も越えて(潜って)いるものの、それ以外の手段で渡るのは初めて。

 小倉からJRで門司港へ。まずは有名な駅構内0kmポスト(門司港駅は九州鉄道発祥の地)などを眺めつつ、駅自体が観光スポット化している様子を見て回る。国の重要文化財にも指定されている駅舎は大正3年の建築で、ヨーロッパの駅をモデルにしたネオルネッサンス風・木造2階建て構造が特徴的。貴賓室があった2階部分は資料展示館として解放され、入場は自由(入口は改札外なので入場券がなくともOK)。

 
 
【↑ ホーム脇には実際の0kmポストと、腕木式信号機や動輪をモチーフにした0マイル記念ポストが】

 
【↑ (左)駅構内の待合室。切符売場も同様に重厚な門構え (右)貴賓室。廊下から覗けるだけで立入禁止】

 
【↑ (右)夜間は駅舎全体がライトアップされる】

門司港駅 もともとは門司駅として、明治24年に開業。この駅舎が作られた当時も駅名は門司。本州・山口県側との連絡には船(鉄道連絡船)が利用され、九州の玄関口でもある門司駅(現・門司港駅)から九州各地へと鉄道が延びていった。海底トンネルの関門トンネルが開通した昭和17年、トンネル出口付近に作られたのが現在の門司駅。その際、旧・門司駅が門司港駅と改称された。

*門司港駅や九州の鉄道発祥当時については、【門司港駅物語】に詳しく解説されている。

 門司港駅から徒歩数分、今年8月9日にオープンしたばかりなのが九州鉄道記念館
 九州の鉄道発祥の地を記念して建てられた施設で、旧門司港機関区だった余剰地の一部を利用している。現・門司港運転区の留置線とも接していて、留置された最新車両の隣にC59型1号機、9600型59634号機、EF10型、キハ07型、クハ481型、クハネ581型などが展示されている光景は、別世界に迷い込んだような雰囲気(^^;;
 583系も今や“展示車両”なのかと思うと、ちと感慨深げ。機関車以外は車内も見学できるので入ってみると、クハネ581は両端がロングシート化された改造車(廃車時はクハ715)で物悲しい。できればオリジナルの現存車両を保存して欲しかったところ。クロスシート部分は座席時だけでなく、下段寝台をセットした状態も再現。どうせなら中上段もセットしておけばわかりやすいのでは?
 キハ07は開館直後に車内が荒らされ、一時は内部見学不可になっていたようですが、このときはキレイに修復されていました。せっかくの車内展示なので、安泰な状況が続くことを願います。

 
 
 
【↑ キハ07 41の運転台、車内】

 
【↑ (左)旧・上山田線の大隈駅備品 (右)本館】

 車両に隣接する本館(資料展示館)は、明治24年に建てられた九州鉄道本社屋を再利用したもの。赤レンガ造りで風情のある建物。
 展示内容に目新しさはないものの、今はなき寝台特急・ブルートレインのヘッドマーク(実物)展示は嬉しいような、悲しいような…。



 811系運転台を設置した運転シミュレーターや、九州の鉄道路線をモチーフにしたHOゲージのジオラマなども設置され、実際の人気はこれらがいちばんかも? キハ58系から《つばめ》、《ソニック》、九州新幹線などが走り回る光景に、子供たちは大喜び。夜間の設定では美しくライトアップまでされ、かなり手が込んでいます。
 欲を言えばもうちょっとマニアックな(本格的な)展示内容にしてもらえると、鉄分が濃いめの大人にも嬉しいんですけれどね(^^;; やや物足りなさは感じるものの、よくできた施設だと言えるのでは。



 鉄道記念館を堪能した後は、徒歩5分ほどの門司港レトロへ。観光用に再開発されたエリアで、明治大正時代に建築された建物が保存展示される様は趣も十分。隣接するベイエリアとともにお洒落な雰囲気に満ちていて、なるほどいい感じ。大々的に宣伝しているだけのことはあります。もっと人工的な、ガチャガチャと落ち着かない雰囲気を想像してたのですが、いたってのんびり、静かに過ごせる場所でした。
 保存建築物には団体客があふれているので、近づく際にはタイミングを見計らって。。。門司港駅にもひっきりなしに団体客が訪れていましたが、ワイワイガヤガヤ、大して興味もないのに大騒ぎしながら見てまわる団体客って、何なんだろう…。あーゆー形でしか“観光”できないのも、ある意味、不幸ですよね。。

 
 
【↑ (左)門司港レトロ展望室のあるレトロハイマートと旧門司税関。 (右)旧門司税関】

 門司港レトロにあるJOYiNT門司港ではレンタサイクルを貸し出しているので、ここからはチャリ移動。全車が電動自転車なので楽そうかな…というのはもちろん、電動自転車自体に興味津々だったもので(^^;; これなら関門海峡国道(人道)トンネルも通れるぞ。1時間100円という料金も格安で嬉しい。
 電動自転車はどれも新車に近いもので、整備も完璧。実際に乗ってみると…うーん、確かに楽だ♪ 高速道路の関門橋を見上げ、対岸の下関市街を眺めながら、観潮遊歩道をのんびり走行。変速多段ギアのおかげで、関門海底国道トンネルへの急坂もスイスイと登れてしまう。快適なサイクリングでした。トンネル入口まで行くバスは日に数本しかなく、かと言って歩くには遠いだけに、レンタサイクル利用は正解でしたね。
 関門海底国道トンネルは二層構造で、上部が車道、下部が人(自転車・原付)道。地上からはエレベーターで降りる仕組み。エレベーターに自転車を乗せるというギミックも、何だか楽しいぞ(笑)。でも、トンネル内は自転車走行不可。なだらかな傾斜でも、距離があるだけに押して歩くのはけっこう辛い。。。一長一短ですね。
 歩いている人の多さは、ちょっと予想外。誰もいない、シンとした雰囲気を想像していただけに、賑やかすぎて拍子抜けでした。大半が観光客風で、「歩いて関門海峡を渡る」面白さには観光要素も十分と言うことでしょうか。トンネルの中央部付近には白線が引かれていて、そこが山口・福岡の県境。映画『チルソクの夏』の1シーンを思い出しました。
関門国道トンネル

 ちなみに、自転車の通行料はたったの20円。人間はもっと安くて、無料! 料金は下関側出入り口に設置された料金箱に入れる、自主規制タイプ(笑)。とは言え完全無人なわけではなく、エレベーターから自転車を押して出てきた際、管理人室(?)からの熱視線を感じました(^^;; そのまま走り去っても追いかけてはこないでしょうが、ちゃんと20円支払いましたよ。

 
【↑ (左)観潮遊歩道から見た関門橋 (右)真下から見るとこんな感じ】

 
【↑ (左)関門海底国道トンネル(人道)門司側入口 (右)入口から海底トンネルへのエレベーター】

 
【↑ (左)トンネルに入ると… (右)福岡・山口県境】

 
【↑ (左)トンネル内設置の緊急時用インターホン (右)下関側入口】

 トンネルを出た下関側入口には、国道9号の道の駅が併設。門司港側ののんびりムードとは一変して、クルマや人が多くざわついた雰囲気。交通不便な門司港側とは対照的に、下関駅とを結ぶバスも頻繁に走っている。
 国道を挟んだ目の前には【みもすそ川公園】が設けられ、攘夷戦争で長州藩が外国船に発砲した砲台跡も近い。レプリカの大砲が一門、展示されているだけですが。公園から関門海峡を眺めたあたりが源平壇ノ浦合戦の古戦場跡だそうで、しばし海を眺める。でも、海の古戦場跡は陸地のそれ以上に現実味が感じられない。。。

 
【↑ (右)みもすそ川公園から見た壇ノ浦古戦場跡 (右)長州藩が発砲した大砲のレプリカ】

 もう少し静かな雰囲気であれば、印象も異なるのだろうか? 国道9号を走るクルマの騒音がすごく、どうにも落ち着かない。国道の狭い歩道を走って、とっとと唐戸方面へ脱出しましょ。歴史的な建造物(日清講和記念館、旧下関英国領事館、南部町郵便局、旧秋田商会ビル)を、一通り見学してみたいので。

 
【↑ 日清講話記念館 (右)日新講和条約締結会議で使用された調度品】

 
【↑ 旧下関英国領事館】

 
【↑(左)明治33年建造の現役最古の郵便局舎、下関南部町郵便局  (右)旧・秋田商会ビル】


 小倉→東京  巌流島へ

 こうした建造物の集中している一角が、門司への渡船と、巌流島へと渡る船が発着する唐戸桟橋。下関側では各所で「武蔵・小次郎決闘の地、巌流島!」が観光アピールされ、ここまで来て渡らないわけにもいかないだろう…といった気分になってくる(笑)。観光名所化しているフィッシャーマンズワーフには目もくれず、とりあえず船に乗ろう。
 期待感に高揚しつつ、いざ、巌流島へ! でもね、着いてみれば単なる小島(当たり前)。決闘場所が確定されているわけでもなく、ダラダラと遊歩道を歩き、武蔵・小次郎の像の前で写真を撮っておしまい。像の近くの人工海浜には、船が一艘、ポツンと置かれていて。武蔵が乗ってきた船をイメージしたもの? 土日祝日には決闘を再現したショーも行なわれるそうですが、何から何まで人工的すぎて、逆にうら寂しい雰囲気を感じてしまう…。起伏のない平坦な島の地形が、余計に“何もない”感を際だたせているような。
 朝からどんより、時おり小雨もパラパラといった空模様が、巌流島に滞在中の40分間だけ集中豪雨になったことも、印象を薄くした一因? 観光のための観光スポットだと思えば、予想通りでしたけれどね。行くことに意味がある、話のネタになる、そんな場所(笑)。船から島を歩く間、ずっと一緒だった団体の皆さんも、「何もなさすぎだよなぁ、資料館でも作ればいいのに」などと口々に。確かに。
 ちなみに、現在の島の形状は埋め立てによるもので、本来は半分ほどの面積だったとか。新たに埋め立てられた部分の大半は私有地で、立入禁止の看板があちこちに立てられているのも興醒め。。。

 
【↑ 天候悪化で関門海峡は大時化。巌流島への航路も大揺れで、10分ほどの航海なのに船酔い客が続出(^^;;】

 

 巌流島に来たぞ! という実感が湧かないなぁと思っていたら、唐戸桟橋の関門汽船乗船券売り場で、ハガキ形式の巌流島上陸認定証なるものを発見。認定証の裏面に住所氏名を書いて申し込むと、後日、自宅に郵送されてくる仕組み(郵送料込み100円)。これが届いて初めて、巌流島へ行ったんだなぁという実感が湧いてきました(笑)。



 巌流島への航路(関門汽船)は下関→巌流島→門司港(その逆)というルートで運航されるため、巌流島を見学しつつ関門海峡を越えることも可能。ただし、この場合は島での滞在時間が90分になり、時間をもてあますこと必至(苦笑)。下関から往復の場合は45分、門司港から往復した場合は50分間の滞在時間ですが、それでも長すぎ(^^;;


 小倉→東京  関門海峡を…渡る

 その後は下関駅周辺まで往復し、高杉晋作の“奇兵隊結成の地”跡碑などを確認。けっこうな距離でも、電動自転車なら速い&早い。
 唐戸桟橋へ戻る途中、長州くじら亭で遅すぎるランチ。

 
【↑ (左)奇兵隊結成の地 (右)長州くじら亭】

 このあたりは古来から捕鯨が盛んで、近代捕鯨でも下関が捕鯨基地として賑わったそう。下関と言えばフグの産地、フグ料理で有名ですが、クジラに関しては意外に知られていない? 観光客向けの店構えなのに観光客は少ないらしく、東京から来たと言うとエラく驚かれました。
 新唐戸市場や巌流島にあふれていた団体観光客の姿もなく、ガランとした店内には自分だけ。“クジラの旬はいつか?”という問い合わせ電話があったらしく、店の人が応対に困っていました。「旬なんかないのに…」。そりゃそうだ。

 
【↑ (左)店頭には捕鯨船のギアも (右)くじらステーキ定食:1,200円。お味も♪】

 唐戸桟橋に戻ると、今度は関門汽船に乗り込み、門司港へ。
 この渡船には自転車も積める(別料金50円)ので、関門海峡をトンネル〜渡船という回遊ルートで巡ることができる。トンネルを往復するだけでは面白くないですからね。借りていた折り畳み式自転車であれば4台程度は積めるものの、一般型の自転車だと1台しか積めないそう。混雑時には借りた人が船に乗れないこともあるので、下関側まで行く利用者には折り畳み式を勧めているのだとか。
 自分が乗船した船にはそんな混乱もなく、自転車は自分だけ。悪天候ですしね。徒歩の乗客も数人で、皆、地元の人らしい。女子高生も2人。海を越えて通学しているのかなぁ。

 
【↑ 桟橋左側が巌流島行き、右側が門司港行き】

 この折り畳み式電動自転車。軽いし速いし楽だしと3拍子揃っている上、長州くじら亭でバイトの女のコが「あれって折り畳めるんですか?」など興味津々に聞いてきたほど、カッコイイ。マウンテンバイク風なので。でも、折り畳みタイプ故にサドルが小さく、15分も乗っているとお尻が痛くなってくる。あのサドルを何とかしない限り、電動アシストで長距離も楽ちん…とは言えないなぁ。

 自転車を返却した後は、再び門司港レトロ地区を散策。既に夕闇迫る時刻となり、人影も疎ら。昼間の喧噪ぶりが嘘のように、落ち着いた雰囲気ですね。ここを訪れるなら、夕方がベストかも。
 昼間は眺めるだけで素通りした門司港レトロ展望室(地上31階)にも登り、夜景を眺める。

 
【↑(左)旧・門司三井倶楽部 (右)旧・大阪商船三井船舶門司支店の建物】

 
【↑ 案内図のようには、なかなか撮れるもんじゃありません(^^;;】

 ライトアップされた門司港駅まで戻ると、駅近くの天正という天ぷら屋で、また食事(^^;; 天丼を卵とじにした丼“どんどん”が店の名物で、テレビでも何度も紹介されているとか。全然知らなかったけれど、門司港のパンフレットやグルメガイドに掲載されていたもので。
 天ぷら屋と言えば聞こえはいいものの、実態はフツーの定食屋。フツーのオッサンが、フツーに作ってくれる(笑)。いかにも余所者らしい自分には、ちゃんと“どんどん”の解説をしてくれましたけれどね。店内に居合わせたのは地元らしい常連客が2組だけで、ここも団体観光客が来るような店じゃありません。
 で、肝心の“どんどん”は…。うん、けっこうイケます。アイデア丼ですね、これ。

 

 門司港駅からは、JRで小倉へ。
 小倉からは、西鉄高速バスで福岡空港へ直行。乗客の多さに驚きましたが、大半は途中の黒崎インター引野口で下車。黒崎の中心街に近いのか、夜なのでよくわからない。。。
 このバスは空港連絡と言うより、小倉−黒崎間の通勤通学、用務の足としての利用度が高そう。福岡空港まで乗り通した客は、自分も含めて2組だけでしたから。空港直行便ではない、博多駅や天神行であれば、また利用層が異なるのかも。